清義明(フリーライター)

 夜の街が静まり返っている。

 新型コロナウイルス感染症による死者が日本で確認された先月から、すでに夜の街での客数の減少は始まっていたのだが、先週末から各地の繁華街では本格的に人の流れが止まった。東京都をはじめとする首都圏に外出自粛の呼びかけが本格的に始まったからだ。そのため深夜ともなれば、週末にもかかわらず繁華街はゴーストタウンと見間違えるくらい、人が少なくなった。

 横浜市中区にある福富町の歓楽街は、スナックやクラブなどの風俗営業が密集するエリアだ。そこでアンダーグラウンドの金融業に関わるA氏はこう教えてくれた。

 「街金は大忙しだよ。闇金も走っている」

 ただでさえ資金繰りに頭を悩ます、期末の3月31日の週にこれである。期待していた最終の週末に売り上げがあがらないのだから、それを当て込んでいたほうは困る。そこで中小のいわゆるサラ金の出番である。

 そして夜の街の遊び人で、そのシンボルの一人ともいえるタレントの志村けんが、新型コロナウイルスによる肺炎で亡くなった。これを受けてのことではないだろうが、厚生労働省対策推進本部は、もってまわった言い方ながら、夜の接客業について注意を促した。

 現在の日本の新型コロナウイルス感染拡大防止は、「クラスター(集団感染)対策」によって成り立っている。

押谷仁東北大教授
東北大大学院教授の押谷仁氏
 これは感染者の全員が二次感染を起こしているのではなく、特定の感染者が感染連鎖を広げているという事実から考えられた日本独自の対策で、これが成功して感染者と死者数を抑えているとも言われている。

 欧米の報道では、日本はなぜこんなに感染者と死亡者が少ないのだという疑問を、困惑交じりに伝えるものがあったが、どれもこのクラスター対策について触れているものはない。これが功を奏しているというのが、やはり今のところ一番正解に近いといえるのではないか。

 しかし、厚労省対策推進本部のクラスター対策班である東北大大学院教授、押谷仁氏が作成した「COVID-19への対策の概念」という資料によると、現在のクラスター対策で追えない感染者が増えているとのことだ。

 まずは症状が軽く、罹患(りかん)の自覚がない若年者による見えない感染クラスター、そしてもう一つは、夜の街がクラスターになっていることが挙げられている。

・若年層クラスターは生物学的理由により見えにくかったが、密接な接触を伴う飲食店に関連するクラスターは社会的理由により見えにくい。
・その結果、クラスター連鎖を見つけることができず、病院や高齢者施設の流行につながっている可能性がある。

「COVID-19への対策の概念」日本公衆衛生学会 2020.03.30暫定版
 「社会的理由」と、もってまわった言い方をしているが、これは要するに夜の街のクラブやキャバクラなどの「密接な接触を伴う飲食店」では、人と人のつながりを追うのが難しいということだ。