田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

 安倍晋三首相は新型コロナウイルス感染症の急速な拡大を踏まえ、4月7日にも緊急事態宣言を発令する方針を表明した。改正新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき、東京都など7都府県を対象地域とし、実施期間を1カ月間とする。宣言を出すか否か、安倍首相は特措法に基づいて、専門家で構成する「基本的対処方針等諮問委員会」を開催する調整に入った。

 この緊急事態宣言を欧米で見られる都市封鎖(ロックダウン)と同じように解釈する人たちがいる。ただ、緊急事態宣言はロックダウンと異なるという理解が一般的だ。

 緊急事態宣言によって、対象地域の都道府県知事は、不要不急の外出の自粛要請や、特定施設の運用者やイベントの主催者などに利用停止などを要請することができる。詳細はNHKのサイトに丁寧にまとめられているので参考になる。

 欧米でのロックダウンは罰則規定を伴うことが多い。その意味で、ロックダウンと異なり、罰則規定がない分だけ、感染拡大の抑止効果が乏しいかもしれない。

 また、海外では休業補償を合わせて行われることが多い。東京都の小池百合子知事も都の判断で休業や時短営業している店舗に対して休業補償の方針を固めたとの報道もある。だが、政権幹部の発言を追う限り、この面で、国の対応は後手どころか、あまり積極的ではない。

 緊急事態宣言が行われたときの経済的なダメージを考えてみよう。対象地域になると予想される東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)そして大阪府の名目国内総生産(GDP)の総計はおよそ220兆円である。

 世界最大の都市(圏)である東京を含むだけあって、世界8位のイタリアを超える規模だ。先進国グループの中でも、上位に入る経済圏となる。ただ、宣言の発令期間や各自治体の対応にもかなり依存するので、断言することは難しい側面がある。

 緊急事態宣言で影響を主に受ける業態は広範囲に及ぶだろう。既に1月後半から影響が出ている観光業や旅客業などはもちろんのこと、特措法と政令で「多数の者が利用する施設」として使用停止の対象に想定されている、映画館や展示場、百貨店、スーパー、ホテル、美術館、キャバレー、理髪店、学習塾などは大きな経済的ダメージを受けることは間違いない。

 ただし、他方でスーパーなどは食料品、医薬品などの生活必需品を販売することが可能である。コンビニについても対象外だ。

 平日の一般企業の活動についてはどうなるか、これも都知事らの判断にかなり依存するだろう。他方で、自宅などへの配送サービスやオンライン・ビジネスに対する需要は高まるだろう。学校の休校措置が継続すれば、代替的なオンライン授業の需要も増える。
衆院本会議で答弁を行う安倍晋三首相=2020年4月2日(春名中撮影)
衆院本会議で答弁を行う安倍晋三首相=2020年4月2日(春名中撮影)
 筆者の専門分野の一つにアイドル経済学がある。東京や大阪で、ライブハウスでの集団感染が生じたこともあり、密閉、密集、密接のいわゆる「3密条件」が当てはまりやすい空間として指摘されている。

 アイドルたちの多くはライブハウスでのビジネスが中心だ。最近では、ライブハウスでの公演が中止や延期が相次いでいる。これはアイドルビジネスにとっても深刻な経済的影響を与えている。

 その一方で、インターネットを利用した動画配信などを進めたり、サイン入り写真などオンライン物販を強化する動きも加速化している。危機に応じてビジネスの形態が大きく変わる可能性が出てきているのだ。