片山修(経済ジャーナリスト、経営評論家)

 日本を代表する企業、トヨタ自動車とNTTが資本・業務提携を発表した。いったい何を目指すというのか―。

 ご存じのように、自動車業界では、コネクティッド、自動運転、シェアリング、電動化の頭文字を取ったCASE(ケース)と呼ばれる最先端技術をめぐって、熾烈な開発競争が繰り広げられている。

 100年に1度の大変革期の中で欠かせないのが、高速通信技術だ。トヨタとNTTの資本・業務提携の理由もそこにある。

 トヨタの豊田章男社長は、2018年1月に開かれた米国の家電IT見本市「CES」で、次のように宣言した。

 「私は、トヨタを自動車をつくる会社からモビリティーカンパニーにモデルチェンジすることを決断しました」

 移動サービス全般を手掛けるモビリティーカンパニー、その具体的な姿が見えてきたのは衝撃の宣言から2年後のことである。今年1月、豊田氏はあらゆるモノやサービスがつながる「コネクティッド・シティー」、すなわちスマートシティー(次世代都市)構想を発表した。それは、従来の自動車メーカーの枠組みを超えた壮大な計画である。

 計画によると、静岡県裾野市のトヨタ自動車東日本の東富士工場跡地の175エーカー(約70・8万平方メートル)の土地に未来のスマートシティーを建設。当面、トヨタの社員2千人が住んで、働いて、遊んで、生活を送る。トヨタはこの未来都市を「ウーブン・シティー(編まれた街)」と名付けた。
実証都市の設計者(右)と握手するトヨタ自動車の豊田章男社長=2020年1月6日、米ラスベガス(共同)
実証都市の設計者(右)と握手するトヨタ自動車の豊田章男社長=2020年1月6日、米ラスベガス(共同)
 ウーブン・シティーは、「150メートル×150メートル」の基本ユニットを原単位とする。それぞれに「クルマだけが通る道」「クルマと人が通る道」「人だけが通る道」を走らせる。自動運転のレベルに応じて、どんな安全技術が必要か、スピードなどの条件設定をどうするかなど、状況に沿った開発を進める計画だ。

 トヨタは、自動運転などの次世代車両技術を持つとはいえ、1社でこのビッグプロジェクトを実現することはできない。とりわけ、クルマのデータなどを瞬時に処理できる大容量の通信インフラや、収集したデータの分析に必要な技術が欠かせない。NTTは、光技術を使った高速通信やAI(人工知能)など、最先端技術を有する。