2020年04月14日 13:20 公開

チャーリー・ヘインズ、BBCニュース

新型コロナウイルスとの戦いで最前線に立っている英国民保険サービス(NHS)のスタッフが、不安症や燃え尽き症候群、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症するリスクに直面している。

英心理学会は、イギリスで「将来の精神衛生の危機」が危ぶまれるなか、心理面での応急処置が提供されるべきだとしている。

英政府はNHSスタッフについて、ストレスを感じたときは電話相談を利用できるとしている。

しかし国会議員らは、それでは不十分だと指摘。精神的に打ちひしがれたスタッフにさらなる支援を提供するよう、政府に求めている。

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超党派の議員グループは、いかなる支援も介護施設スタッフや葬儀場の従業員、清掃員など、最前線で働くすべての労働者に届くようにすべきだとしている。

議員らはまた、前線で業務に当たる組織の管理者に、定期的な休憩などの予防策を実施し、スタッフに自分自身をケアするよう呼びかけ、「大丈夫じゃなくなるのは大丈夫」だと伝えるよう、書簡で求めている。

議員らと英心理学会は、心の傷(トラウマ)の早期の処置には、心理学者とセラピストの支援が簡単に受けられるようにすることが必要だと主張している。

新型ウイルス危機の前線にいるスタッフは、一般の人々が決して遭遇しないであろう事象に、常にさらされている。患者の死、同僚の発症、高度のストレス、増大するCOVID-19(新型ウイルスの感染症)の危険性などだ。

トラウマを受けると、不眠症や混乱状態、罪の意識に悩まされる人もいる。震えや頭痛、食欲減退、うずきと痛みなどの身体的症状が現れる人もいる。

ときには、心の健康状態が悪化し、不安症やPTSDを発症する場合もある。

「私たちは、将来の精神衛生の危機と、燃え尽き症候群に陥る多数の保健職員の出現というリスクに直面している」と、英心理学会のキャスリン・スコット政策ディレクターは話す。

「予防に力を入れた計画とリーダーシップをもって今行動すれば、COVID-19に対応している人々のトラウマの影響を軽減することができる」


保健・社会保障省の報道官は、「今回の感染の流行が、この国のすべての保健・介護職員の精神衛生と健康を脅かすことを懸念している」と述べた。

また、NHSイングランドがヘッドスペース、アンマインド、ビッグヘルスの各精神衛生関連団体と提携し、「NHSと介護スタッフの両方に、無料で利用できる精神衛生アプリ」を提供すると話した。

報道官はさらに、苦しんでいる人向けの追加的サービスの資金とするため、500万ポンド(約6億7500万円)を精神衛生の関連団体に助成すると説明した。

精神科顧問医で英医師会の精神衛生部門トップのアンドリュー・モロディンスキー博士は、「医療スタッフは死を目の当たりにするのに慣れているが、何もできずに多くの人がどんどん亡くなっていくのを目にするのには慣れていない」と指摘する。

また、「そのことが不安症やうつ、トラウマなどの多くの症状を引き起こす」とし、「すでに私の病院で見られる。スタッフは不安感を覚えていて、精神衛生が影響を受けてすでに仕事を離れている人もいる」と述べた。

「何十年も心の傷と生きることになる」

超党派の議員グループは、NHSと介護業界がスタッフに思いやりをもって接し、支援を得る方法を紹介するよう、政府が働きかけることを求めている。

議員たちは、アメリカでハリケーンや山火事などの災害時のために開発された、精神的な応急処置の利用も真剣に考えるよう要求している。

この応急処置は、ストレスが深刻で永続的な問題となる前に、危険な状態にある人々に支援を求めることと、互いに支え合うことを働きかけるものだ。

マット・ハンコック保健相に宛てた今回の書簡を書いた、スコットランド国民党のリサ・キャメロン議員は、保健職員の心の健康を守ることは、適切な防具を提供するのと同じく「不可欠だ」と話す。

キャメロン氏はまた、「今行動しないと、最前線のスタッフとコミュニティーは今後何十年間か、コロナウイルスの心理的影響と生き続けることになる」と訴えた。

イギリスでは、新型ウイルスに感染したと診断された人が、何千人も亡くなっている。その中には、看護師、医師、外科医、その他のNHSスタッフも含まれている。

(英語記事 Coronavirus front-line NHS staff 'at risk of PTSD'