黒字に転換するためには、経済成長率の安定化=税収安定化、増税、行政改革などが考えられる。増税の有力な政策が消費税率の引き上げであり、財務省も大きく依存している。

 だが、そもそもプライマリーバランスを黒字転換させる意味などない。元国際通貨基金(IMF)チーフエコノミストのオリビエ・ブランシャール氏と経済産業省の現役幹部、田代毅氏の共著論文「日本の財政政策の選択肢」では、次のように指摘されている。

 現在の日本の環境では、プライマリーバランス赤字を継続し、おそらくはプライマリーバランス赤字を拡大し、国債の増加を受け入れることが求められています。プライマリーバランス赤字は、需要と産出を支え、金融政策への負担を和らげ、将来の経済成長を促進するものです。 要するに、プライマリーバランス赤字によるコストは小さく、高水準の国債によるリスクは低いのです。


 要するに、ブランシャール氏らは国債を増加させ、それで政府が積極的財政を行うことによって経済成長を実現することが望ましいと指摘している。その結果、財政破綻のような状況も回避できると主張したのである。

 この場合、プライマリーバランスの黒字化自体は目的ではない。簡単に言えば、どうでもいい指標なのである。

 もちろん、「新型コロナ危機」に直面している日本では、ブランシャール氏らが指摘した状況よりも経済は悪化しているので、さらに積極的な財政政策が望まれている。プライマリーバランス黒字化など、ますますどうでもいいのである。

 だが、麻生氏と財務省は、いまだに従来の2025年プライマリーバランスの黒字化に固執している。ということは、彼らの狙いは一つしかない。感染期が終わった段階、つまり、そう遠くない将来での大増税である。

 だから、景気刺激としての消費減税など、財務省とそのシンパの念頭にあるわけもない。むしろ、全力で否定する政策の代表例だろう。
東京・霞が関の財務省外観(桐原正道撮影)
東京・霞が関の財務省外観(桐原正道撮影)
 大増税は「コロナ税」か、消費税の大幅引き上げか、あるいはさまざまな税の一斉の引上げかは分からない。ただ、日本の感染期の経済対策がしょぼい規模に終わり、さらに大増税を画策する根源に、日本で最も悪質な組織、財務省の意志があることは間違いない。

 問題なのは、そのような財務省の緊縮主義を、二階氏のような薄っぺらい精神主義者や、麻生氏のような頑迷な「プライマリーバランス教」の信者が支持していることだ。彼らこそ日本の最大の障害である。