「竹島密約はなかった」金鍾泌元首相の証言


 日韓国交回復交渉の最大の焦点は、戦後賠償であり、これは「金・大平メモ」により決着がついた。その意味においても、先の金鍾泌元首相の「笑而不答」には興味深い内容がいくつか含まれているのでご紹介したい。

 一つは先述した「竹島密約」はデマであることを認めた点である。金曰(いわ)く、「(河野一郎は竹島に対して)『この問題は叫ぶ事案ではない。解決できない問題だからそれだけ言っても仕方ない』と話した言葉を、丁一権首相が国内に伝えた。その話が膨らんで『竹島密約』やこれに対する合意文書があるというような話に膨らんだデマにすぎない」と述べている。日本政府も竹島密約を否定しているので、金の証言は信憑性がある。

 二つには、2005年8月26日に韓国外交部が公開した「金・大平メモ」は偽物であることを指摘した点である。

 外交部が公開したメモは、156件、3万5354ページにも及ぶものであり、日本と合意した「無償3億ドル、有償2億ドル、民間借款1億ドル以上」を提供する経済協力方式で合意したことが含まれているが、金が言うには「そのとき使用した紙は、大平執務室にあった手のひらほどの大きさのメモ用紙1枚で、その内容も非常に簡単で3、4行にすぎなかった。字体も私の手書きではない。私はハングルと漢字を混用して作成した」と述べており、大平が作成したものではないかという問いに対しても、「大平も1枚のメモ用紙に記載された同じ内容を記録した。私たちは、各自が書いたメモを相互に比較して、確認した。会談のなかで彼が書いたものではない」と明確に否定している。その上で、原本は「渡したメモは長官を介して外務省に伝達されたり、保存する過程で失われたのではないか」と推測している。

 三つ目に金鍾泌元首相といえば、日韓国交回復交渉のとき、「正常化交渉の邪魔になるならば、竹島を爆破してしまえ」と発言したことが有名だが、それについては「金・大平メモ」作成時、大平から竹島問題を持ち出され、「国際司法裁判所に提訴する」と言われたため、「好きにしろ。私たちは決して、国際司法裁判に応じないだろう」「独島は私たちが実効支配している。独島を爆破したとしても、あなたに与えることはできない」と述べたのが、誤って広まったものだと述べている。