何より30万円案最大の欠点は、所得が減少したことを自己申告で役所の窓口に出向いて証明しなければいけないことだ。それが受理されて、初めて給付金が下りる。これだけでも相当の手間と時間がかかる。フリーランスの人たちにとっては、そもそも所得減少を証明する書類を揃えるのが難しい場合があるはずだ。

 問題はこれだけではない。悪徳企業経営者がいたら、社員の給料をわざと半減させて、それで社員に30万円の給付金をゲットさせるだろう。言い換えれば、本当に必要な人に届かなくなるのだ。

 立憲民主党などは、この30万円給付に固執し、補正予算案を批判している。それは国民の生活を考えない党利党略的な判断でしかない。

 それに比べて、全国民一律に10万円を配布するのは、最もムダがない。資格調査がいらない分だけでもスピードが速い。

 政府がこの案を当初採用しなかったのは、財務省の緊縮主義からの抵抗があったからにほかならない。もちろん富裕層からは年度末の確定申告で税金をより多く徴取するので「公平」にもなる。ただし、給付金を単に消費に回す点だけに話を絞れば、高所得者層の多くも他の所得者層と大差なく、給付金を消費に回すことが実証分析で知られている。

 10万円給付案への反論として、定額給付金が過去に実施されたときに、30%程度しか消費されず、あとは貯蓄に回されたというものがある。だが、三つの理由から間違っていると言わざるを得ない。

 (1)貯蓄に回ることで、むしろ将来不安の解消に貢献すること、(2)貯蓄は将来の消費でもあるので、感染症の蔓延期が長期化して、家計が苦しくなれば消費に向かうかもしれない、(3)社会全体が余裕(=ため)をもっていれば、感染期が終わったときに力強い景気回復が可能になる、と考えられる。

 要するに、ムダなおカネなどはないということだ。「貯蓄=ムダなおカネ」という言説は、財務省が喜んで流布する素人騙しの都市伝説でしかない。
新型コロナウイルスの感染拡大防止のため東京・銀座では多くの店舗が休業、街は閑散としていた=2020年4月18日(三尾郁恵撮影)
新型コロナウイルスの感染拡大防止のため東京・銀座では多くの店舗が休業、街は閑散としていた=2020年4月18日(三尾郁恵撮影)
 さて、問題なのは、この定額給付金が1回で済むかどうかである。新型コロナウイルスの感染拡大がいつ終わるのか、日本国内だけでもいまだ不透明だ。

 ましてや、世界の動向も全く分からないので、長期戦を覚悟する必要がある。そのときにわれわれの生活を支える仕組みが求められる。

 ここで、大阪大の安田洋祐大准教授が提案する面白い給付金政策を紹介しておこう。感染終息まで、毎週1万円を全国民に支給するというものだ。