賀来満夫(東北医科薬科大特任教授)

 2020年4月16日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、それまで首都圏など7都府県を対象区域としていた、改正新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言が日本全国に拡大され、発令された。

 昨年12月31日に中国・武漢で原因不明の肺炎が報道されてから4カ月足らずで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者数が全世界で230万人に達し、16万人を超える死者数となった。まさに、今回の感染症がクライシス、危機そのものであり、驚異的であるというほかはない。

 21世紀になって人類が経験した重篤化するコロナウイルス感染症としては2002年の重症急性呼吸器症候群(SARS)、2012年の中東呼吸器症候群(MERS)、そして今回の新型コロナウイルス感染症が知られている。ただ、今回の新型感染症がこれほどの広がりと被害をもたらしたことは、世界の多くの専門家にとっても衝撃的な出来事である。

 しかも、保険制度の不備や多民族国家という背景があるにしても、世界の感染症対策をリードしてきた疾病予防管理センター(CDC)を有する米国において、世界最多の感染者数、死者数が報告されることになることは、想像すらできなかったのではないだろうか。

 加えて、中国が行った武漢のロックダウン(都市封鎖)という、近代史上これまでに前例がない対応を欧州各国が後追いして実施し、さらに米国でも世界の中心都市であるニューヨークまでもがロックダウンとなったことは、今回の新型コロナウイルス感染症のインパクトがいかに大きなものであるかを表している。

 感染症対応のポイントは、迅速かつ確実な診断に基づき的確な治療を行うこと、そして感染予防を徹底し、感染の蔓延(まんえん)を防ぐことにある。今回の新型コロナウイルス感染症に対しては、そのいずれもが十分でないところに大きな問題点がある。

 現在、新型コロナウイルス感染症の診断にはPCR検査が利用されている。ただし、インフルエンザの場合と異なり、今回の新型コロナウイルスは体内での増殖が緩やかで、感染初期にはウイルス量が少ないため、PCR検査での結果が陰性となることもしばしば経験される。
2020年3月12日、米ニューヨーク中心部の繁華街タイムズスクエアでマスクを着けて歩く人(AP=共同)
2020年3月12日、米ニューヨーク中心部の繁華街タイムズスクエアでマスクを着けて歩く人(AP=共同)
 また、PCR検査が陽性となって入院しても、新型コロナウイルスに対して特異的に効果がある抗ウイルス薬が現在無く、治療は対症療法となる。また、感染者の80%は軽症であるものの、1週間前後で急速に悪化し、酸素吸入が必要となり、さらに感染者の5~6%は人工呼吸器を装着することとなる。

 重症化・重篤化するのは高齢者や基礎疾患を有する感染者が多いが、この重症化するメカニズムはいまだ明らかでなく、青壮年の感染者もしばしば重症化している。このため、軽症者や無症状病原体保有者が自宅やホテルなどで療養する際にも重症化するリスクがあり、重症化した際の医療アクセスに関する体制作りが必須となる。