上西小百合(前衆議院議員)
新型コロナウイルスの感染拡大はとどまるところを知らない。安倍晋三首相が4月7日に緊急事態宣言を発令して2週間が経過したが、国内での感染者数は1万人を超えた。
16日に緊急事態宣言が全国に拡大されたことによって、都道府県知事は法的根拠のもと、外出自粛の要請、教育機関の閉鎖、集会やイベントなどの開催制限を実施できるようになった。だが、私が前回指摘した通り、安倍首相は中国の春節前に政治判断すべきだったと思っているくらいなので、決断の遅さが本当に憎らしい。
この判断の遅れにより、失われた命がどのくらいあるのだろうかと考えると、怒りが沸々とわいてくる。もちろん、いくつかの業界から「緊急事態宣言など出されては困る」という根強い声があったのは分かるが、国民の生命より大切なものはない。憲法で国民の代表と定められている国会議員と総理大臣が周りの声に踊らされ、国民の命を危機にさらすようでは話にならない。
既に、経営危機にひんする企業や個人事業主、生活困窮危機に陥った労働者からも悲痛な声が上がっている。前議員である私のもとにさえ、助けを求めてこられる方々がいるような状況だ。
そもそも、日本では「アベノミクスで景気はよくなった」とたいした実感もないのに信じ込んでいる人が多い。だが実際は、新型コロナウイルスが拡大する前から経済は低迷を続けている。
そこに昨年の消費税増税が加わり、経済はまさに氷河期であった。その上、今度はわずかな仕事さえも外出自粛や行動制限が要求されるわけだから、困窮するのも無理はなく、すべての国民がとんでもない不安感に包まれている。
安倍首相や菅義偉(よしひで)官房長官や、各都道府県知事らに「外出自粛ですよ、物資は足りていますから買い占めはしなくても大丈夫ですよ」と言われても、生活の糧を得るために、感染の危険を冒して外で働かなければならない国民もいる。

スーパーやドラッグストアに行っても相変わらずトイレットペーパー、マスク、アルコール除菌スプレーやハンドソープは見当たらないので、家族のために買い出しに奔走せざるを得ない主婦もいる。
国が営業・外出自粛を求めるのであれば、補償を十分に行い、国民が感染リスクを徹底的に排除した生活を行うことができるようにサポートする必要がある。当面の生活費という浅い考え方ではなく、国民の命を守ることに直結させるという考え方で支援策を講じなければならない。
星野源さんとのコラボ動画をアップした安倍首相のように、優雅にワンちゃんとコーヒーを飲んでいられない悲惨な国民生活を理解できていないことが、政治家たちの言葉や態度からひしひしと伝わってくる。