清水英斗(サッカーライター)

 「今はサッカーどころじゃない」「今年はJリーグ無理」

 4月の緊急事態宣言を受け、このような反応を散見するようになった。新型コロナウイルスに対し、得も言われぬ不安に駆られ、身構えるのは当然だ。多くの人が神経を尖らせている。

 「Jリーグ、今年は無理だ」とさっぱり諦めることができたら、どれほど安心か。どれほど楽だろうか。

 しかし、その選択肢は存在しない。正邪好悪を問う以前の話だ。「今年は」という都合のよい選択肢がないのだ。

 仮に「今年は無理」と全ての試合を中止したとする。クラブは入場料収入の全てを失う事になる。さらに放映権収入、広告収入にも響く。

 その状態に耐えられるクラブがいくつあるのか。市民クラブはもとより、親会社があるクラブでも、その業態によっては現実的な危機が訪れる。

 Jリーグのクラブの内部留保は決して多くない。そもそも、プロスポーツクラブの経営は内部留保を溜め込むことが難しい。仮に黒字を出し続けるクラブが王者になれず、中位に甘んじていれば、「選手を補強しろ!」とファンやサポーターといったステークホルダー(利害関係者)に要求されるだろう。

 公共性が高いからこそ、過剰に内部留保を蓄えられない。だからこそ、たった1年の不測の停止が、深刻な危機を引き起こすわけだ。もちろん、政府の休業補償があれば話は別だが、現状で充分なものはない。

 実際、ドイツではブンデスリーガ1部と2部の計36クラブのうち、13クラブに破産危機が迫ったと伝えられた。5月にリーグ再開出来なければ7クラブが破産、6月にも再開できなければ、さらに2クラブの破産が予測されている。
2019年度決算で約20億円の赤字を計上し、オンラインで取材に応じるJ1鳥栖の竹原稔社長=2020年4月26日
2019年度決算で約20億円の赤字を計上し、オンラインで取材に応じるJ1鳥栖の竹原稔社長=2020年4月26日
 そして、1カ月ごとに破産クラブは増える。他の欧州リーグも似た状況か、あるいはドイツ以上に深刻かもしれない。Jリーグにとっても、決して他人事ではない。

 もしくはJクラブに限れば、Jリーグや日本サッカー協会(JFA)の支援、借入金によって耐えられる可能性はある。しかし、そこに資金を引っ張られれば、市井のクラブや育成組織はより厳しい状況に追い込まれてしまう。これまで子供や社会人のプレー環境を作り、選手を育ててきた土壌を失うことは、Jリーグが基盤を失うことに等しい。

 そう考えれば、「今年は無理」と安易には言えなくなる。