田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

 7年超にわたる第2次安倍晋三政権の中で、「モリカケ」といえば、学校法人森友学園(大阪市)と加計学園(岡山市)をめぐる問題だった。これに首相主催の「桜を見る会」が加わり、さらに最近では「アベノマスク」が加わりそうである。

 総称すると、「モリカケ・桜・アベノマスク」というのだろうか。本当にあるのかないのか分からない「疑惑」を、一部マスコミや野党、それに反安倍政権の識者たちが盛り上げていく、この一種の炎上商法には正直、ほとほと呆れている。

 保守系論客がしばしば利用している言葉の中に、「デュープス」というものがある。原義には共産主義運動との関連があるが、そんな「高尚」(?)な活動とはおそらく無縁だろうから、本稿では、単に「騙されやすい人」という意味でデュープスを使う。「モリカケ・桜・アベノマスク」は、まさにこのデュープス向けの「食材」である。

 今回で200回を迎える本連載でも、「モリカケ」「桜」両問題について、たびたび取り上げてきた。国会でも何年にもわたって議論されているが、デュープスが目指している安倍首相の「疑惑」は少しの証拠も明らかにされていない。

 さすがに何年続けていても、安倍首相の「疑惑」が明らかにならないので、デュープスたちは、首相を「嘘つき」とみなす傾向がある。自分たちが「疑惑」の証拠を提供できないので、その代わりに他人を「嘘つき」よばわりするのだろう。

 これでは、単なる社会的ないじめである。だが、こういう意見を持つ人は多く、中には著名人も安倍政権や首相を嘘つきだと断ずる傾向がある。全く安倍首相もお気の毒としかいいようがない。
参院決算委員会で答弁を行う安倍晋三首相=2020年4月1日(春名中撮影)
参院決算委員会で答弁を行う安倍晋三首相=2020年4月1日(春名中撮影)
 ただし、デュープスが生まれる経済学的背景もある。私はしばしばこれを「魔女狩りの経済学」と呼んでいる。

 新聞やニュース番組、ワイドショー、そのほとんどが「真実」を報道することを目的としてはいない。あくまで販売部数や業界シェア、視聴率を目的とした「娯楽」の提供にある。

 これは経済学者でハーバード・ビジネス・スクールのマイケル・ジェンセン元教授の指摘だ。ジェンセン元教授の指摘は多岐にわたるが、ここでは主に2点だけ指摘する。