杉山崇(神奈川大人間科学部教授)

 新型コロナウイルスの猛威を受け、日本全国に緊急事態宣言が出されています。人の流れも活動も抑制され、国民の不便と我慢が続いています。

 人の移動と接触を極力抑えることは、感染症の拡大を防ぐ効果的な方法の一つです。この不便も、我慢も、混乱も、全ては「感染症に打ち勝って、明日を生きるためだ」と説明されています。我慢の限界に近い方も少なくないと思われますが、今のところ、国民は懸命に受け入れようとしています。

 今、「コロナ自粛疲れ」への対策が必要とされています。もちろん、経済的な「疲れ」も深刻です。この混乱の中で、生活に窮する人が出てくることは必然でしょう。

 ただ、どんな混乱の中でも、心理的な安定だけは保ちたいものです。心理的な安定は、適切な行動を促すからです。

 心は環境に反応するものなので、本来なら環境が早く落ち着くことが、何より大切です。環境が落ち着けば、自然と心も安定するからです。しかし、なかなか落ち着きそうにありません。

 そこで本稿では、どんな落ち着かない環境の中でも、「コロナ自粛疲れ」を生き抜く方法を紹介したいと思います。そのために、まずは私たちを疲れさせる「コロナストレス」とでも言うべき事態の正体を心理学的に考えてみましょう。

 まず、今、クラブなどの社交の場や映画館、スポーツジムといった「(生きるために)不要不急」な場は営業自粛を余儀なくされました。また、芸能などの文化活動も非常に制限され、個人的なイベントも自粛を求められています。

 また、公園では子供の遊具にも「使用禁止」と書かれた黄色いテープが張り巡らされています。学校や幼稚園も閉鎖され、友達に会うこともできません。

 これらは、人が集まることでクラスター(感染者集団)が発生することを恐れたためでしょう。このため、私たちは「気晴らし」の場を奪われたと言えます。
※写真はイメージです(ゲッティイメージズ)
※写真はイメージです(ゲッティイメージズ)
 「生きるため」だけの活動では、気分はどんどんすり減っていくものです。民俗学者の桜井徳太郎はこの状態を、「ケ(褻)」という普段の暮らしを営む心のエネルギーが枯れた状態、つまり「ケガレ」と表現しました。「ケ」を回復させるには「ハレ」、日常のストレスから開放された時空が必要なのです。

 しかし、今の私たちに「ハレ」はありません。桜井の言うところの「ケガレ」の状態にあるのです。