2020年04月28日 12:53 公開

新型コロナウイルスの感染拡大に対するイギリス政府の備えが不十分だったことが、BBCの取材で分かった。対策の最前線に立つ医療従事者にとって必要不可欠な、個人防護具を十分に購入できていなかった。

新型コロナウイルスによる感染症「COVID-19」がイギリスに到達した時点で、2009年に始まった政府のパンデミック(感染症の世界的流行)対策備蓄には、医療ガウンやフェイスシールド、綿棒、納体袋などが含まれていなかった。BBC報道番組「パノラマ」の取材で分かった。

その後、欠けている必需品を購入するよう政府専門家が繰り返し助言しても、英政府はこれを無視し続けた。

イギリスの国民医療制度、国民保健サービス(NHS)のスタッフは、医療用個人防護具(PPE)が不足しているせいで自分たちが危険にさらされていると批判している。

これに対して政府は、対応は適正で、PPE備蓄を増やすために最善を尽くしていると話している。

イギリスではこれまでに、新型コロナウイルスによって100人を超える医療スタッフや介護スタッフが病院で死亡している。この人数には自宅や介護施設で死亡した人は含まれていない。

パンデミックについて政府に助言する専門家委員会「新型呼吸器系ウイルス脅威諮問グループ(Nervtag)」は、昨年6月の時点で医療用ガウンの調達を政府に促していた。

イギリスでは現在、医療用ガウンが特に不足している。世界的なPPE需要の急増で、新規調達が難しくなっている。

医師や看護師たちはこれに加えて、高性能の微粒子用マスク「FFP3マスク」も不足しており、これがないとCOVID19患者を手当てする医療者の命に関わると訴えている。

番組「パノラマ」の取材では、数千万枚のFFP3マスクが所在不明になっていることも分かった。

2009年に政府が整えたパンデミック用備蓄品のリストには、FFP3マスク3300万枚が記載されている。しかし、配布されたのは1200万枚に過ぎない。

残りの2000万枚以上の高性能マスクがどこへ行ったのか、政府は説明を拒否している。

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政府報道官は、医療品不足を報告する緊急ホットラインを通じたFFP3マスクの要求は「限られている」と説明。それも、備蓄分が「すべて配布されていない理由のひとつ」だと話した。

政府報道官はさらに、諮問グループが医療用ガウンの調達を助言したのは最近のことで、「将来的な備蓄では、他の必要な器具と合わせて調達する」と述べた。

BBC番組「パノラマ」は、複数のNHS関係者から匿名を条件にPPEについて話を聞いた。

「政府には透明性がまったく欠けている。政府のせいで現場はパニックに陥っている。政府からPPEが支給されるのか分からないので、よそから手に入れようと個々に駆け回っている状態だ」と、調達責任者は話した。

政府はさらに、医療用のゴーグルや検査に必要な綿棒、遺体を納める納体袋も備蓄しなかった。

公衆衛生の専門家で以前から英政府を批判してきたジョン・アシュトン教授は番組に対して、政府の準備不足のひどさは度肝を抜かれるほどだと話した。

「計画せず、防護具を注文せず、備蓄がないまま、医者や看護師やその他の医療スタッフや福祉スタッフを最前線に送り込んでいる。安全を守るための装備がなにもないまま」

これに対して政府報道官は、2009年に始めたパンデミック対策備蓄はインフルエンザを想定したもので、COVID-19は入院率がはるかに高い別のタイプの病気だと説明した。

政府によると、綿棒や納体袋の調達を諮問グループが助言したことはないものの、目の防護は提言されたため、備蓄には安全ゴーグルが含まれている。

番組はさらに、NHSスタッフが身につけるべきPPEについて、政府の着用指針が変更されたことについても調査した。

政府は今年1月、専門家グループと協議した末、COVID-19を正式に「重大な影響をもたらす感染症(HCID)」に指定した。

英健康安全庁(HSE)が2019年にPPEについて発表した報告はすでに、HCIDの診療にあたる医療スタッフ全員に対し、医療用ガウン、FFP3マスク、フェイスシールドを着用するよう提言していた。その内容は当時の政府指針に沿ったものだった。

しかし政府は今年3月13日、PPEの着用指針を緩和。きわめて高リスクの状況を除けば、医療用ガウンより防御力の低いプラスチック・エプロンや、防御力の低いサージカルマスクで十分だと指針内容を変更した。

この同じ日に、政府はHCIDのリストからCOVID-19を削除するため、手続きを開始したことが、BBCパノラマの取材で分かった。

しかし政府は、そもそもCOVID-19をHCIDに含めるよう提言した専門家グループの意見を求めなかった。代わりに、「危険病原体に関する諮問委員会(ACDP)」の助言を求めた。

COVID-19のHCID指定について、ACDPが政府から意見を求めたのは3月13日午前の会合が初めてで、その日の議事項目のうち「その他」として扱われた。

危険な病原体に関するこの委員会は、COVID-19をHCIDのリストから外すことに賛成した。しかし、委員会関係者によると、PPEが不足している現状ではこうするしかない、現実的な判断だったという。

保健省の公衆衛生執行機関、パブリック・ヘルス・イングランド(PHE)が、COVID-19はもはや「重大な影響をもたらす感染症(HCID)」に含まれないと発表したのは、その6日後のことだった。

政府報道官は、COVID-19のHCID指定を外した理由について、全般的な致死率が低く、臨床的な認識も高まり、新型コロナウイルス専用のウイルス検査もあるからだと説明した。

また、COVID-19はもはやHCIDとは考えられないと言う委員会の助言は、あくまでも科学的な判断によるものだと述べた。

「HCID指定は、専門的な知識と設備を必要とする症例の数が限られた、深刻な感染症に使われるものだ」と、政府報道官は話した。

「今回の事態は前例のないパンデミック(世界的流行)で、我々はしかるべきタイミングで適切な対応をしてきたし、最高の科学的知見に常に導かれてきた」

「政府は新型コロナウイルスと戦うため昼夜を分かたず取り組んでおり、全員のNHSを常に守り大勢の命を常に助けるために設計された戦略を実施している」


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