だが、同時に米国の医療費のうち3割以上が、製薬会社や民営医療保険会社の、必要以上の利潤になっているという研究もある。オバマケアは、それを促進した側面があり、そのため製薬会社が大量に生産した合法的な鎮痛剤の過剰摂取によって廃人になる人が、コカインで同様になる人と同じくらいの比率になり、重大な社会問題になっていた。

 そこでトランプ氏が登場したという側面もあるのだ。トランプ氏が大統領に就任以降、製薬会社、病院、薬局そして米国独特の処方箋管理組合などの競争を促進したり、日本でいう保険の点数の数え方を変えたりすることで、これらの組織が効率のよい仕事を行うようになった。

 その結果として、医薬品などの値段を下げるため、努力をしてきた。それは民主党が下院で多数になってから、むしろ彼らの一部の協力を得て、軌道に乗りつつある。これによる薬価の切り下げこそが、米国における医療福祉問題解決の肝であると言っても過言ではないだろう。

 米国の医療費の3割以上が医療関係業界の不当な利潤になっているのは、メディケアという公的制度があるために、競争原理が働いてこなかったためであるという考え方もある。民営医療保険会社も、メディケアの補償内容や自己負担を参考に、ビジネスを組み立てているからである。

 そうして彼らの得た不当利潤のかなりの部分が、オバマ氏やヒラリー氏に流れているという噂は、ワシントンの一部で執拗に囁かれていた。それもヒラリー氏落選の理由の一つなら、そのカネの力で彼女がさまざまな妨害工作を行ったため、サンダース氏は予備選撤退に追い込まれたという説もある。「全ての人にメディケアを!」が実現したら、民営医療保険会社や製薬会社が儲からなくなり、ヒラリー氏にカネが入らなくなるからである。

 だが、サンダース氏も実は2019年の1年間だけで160万ドルの献金を、医薬品業界や民営医療保険の会社から受け取っている。「目こぼし料」の意味もあるだろう。

 しかし、同時に「全ての人にメディケアを!」が実現したとしても、メディケアという競争原理が働かないシステムでは、これらの業界は(今より少なくなっても)不当利潤を得続けることが不可能にはならない。所詮サンダース氏も、ヒラリー氏やオバマ氏、バイデン氏らと「同じ穴の狢(むじな)」なのではないか。

 少なくともバイデン氏がオバマケアの持続可能性を高めようとしている理由は、もうお分かりだと思う。バイデン氏にセクハラ問題が持ち上がり急に立場が苦しくなった4月末になって、ヒラリー氏が彼の支持を表明した理由も言わずもがなだろう。
オバマ前米大統領(左)とバイデン前副大統領=2015年1月(UPI=共同)
オバマ前米大統領(左)とバイデン前副大統領=2015年1月(UPI=共同)
 やはりトランプ氏と共和党が考える「競争原理による民間活力活性化」政策こそが、最終的な解決策なのである。CDCやFDAといった政府機関も、NPOのような形ででも、政府の外に出した方が、他の類似したNPOなどとの競争によって、よりよい仕事をするのではないかと思う。