下村靖樹(フリージャーナリスト)

 4月半ば、中国・広州で新型コロナウイルスに関連して、アフリカ人差別が広がっていると、世界各国のメディアで取り上げられた。

 ことの発端は、アフリカ系であることを理由にレストランなどへの入店を拒否されたり、アパートを追い出され、路上生活を強いられているという、アフリカ系住民や留学生が助けを求める動画だった。中国メディアによれば、ナイジェリア人1人が新型コロナウイルスの検査から逃れるため、地元病院の看護師にけがを負わせたうえ、逃亡した事件が引き金になったそうだ。

 ウイルス鎮圧に力を入れている広州では、外国から持ち込まれるウイルスが第2波の引き金となることを警戒しており、外国人に対する検査を強化している。特に、アフリカ諸国を母国とする人は国外渡航の有無にかかわらず、約4500人全員が検査を強要されていたという。

 動画は多くのメディアでセンセーショナルに取り上げられたり、会員制交流サイト(SNS)経由で広く拡散し、アフリカの著名人が「救出に向かう」と声明を出すなど、世界的に大きな問題となった。その結果、店頭に「アフリカ系お断り」の張り紙をしていたマクドナルドが謝罪したり、中国政府の駐アフリカ連合(AU)大使の謝罪がAUに掲出される事態になった。

 一方のアフリカでも、アフリカ大陸で感染者が報告された直後から、東洋人への差別行為が伝えられた。アジア人女性が現地の人々に侮蔑される動画が投稿されたり、東洋人に対してタクシーから乗車拒否を受けた。日本人を含む多くの東洋人が、街中で「コロナ、コロナ」と罵声を浴びせられたようだ。

 現在は都市封鎖(ロックダウン)中の国が多く、トラブルはあまり発生していないようだが、アジア人に対する偏見に留意するよう注意喚起を出している在外公館もある。

 迫害に関わっていた人物が逮捕されるなどして、公的な非難こそ止んでいる。ただ、市民レベルでは、コンゴ人の父と中国人の母を持つ中国在住の有名ブロガーのウェブサイトに「アフリカに帰れ」というような誹謗中傷が殺到するなど、未だ沈静化したとはいえない状況だ。
中国広東省広州市で、マスクをして地下鉄に乗る乗客=2020年2月(共同)
中国広東省広州市で、マスクをして地下鉄に乗る乗客=2020年2月(共同)
 アフリカで初めて新型コロナウイルス感染者が確認されたのはエジプトで、2月14日のことだった。以降、他の地域よりは緩やかであるものの、感染者数は増え続け、4月19日時点で、全54カ国の感染者は2万1317人、死者1080人、回復者5203人となっている(レソトとコモロでは感染者ゼロ)。

 医療システムや社会基盤が脆弱(ぜいじゃく)なアフリカ諸国の反応は素早かった。感染拡大が懸念され始めた3月下旬には、多くの国が物資の運搬を除き国境を閉鎖し、軍や警察の管理の下、ロックダウンや夜間外出禁止令を出すなど、人の移動を制限した。

 他方で、医療物資の不足は深刻で、世界各国に支援を求めることとなった。その声に応えたのが、中国の電子商取引(EC)最大手、アリババグループ創業者の馬雲(ジャック・マー)氏で、エチオピア経由でアフリカ54カ国に送付すると表明した。