2020年04月30日 15:27 公開

ジェイムズ・ギャラガー健康・科学担当編集委員

新型コロナウイルスによる感染症(COVID-19)の治療薬として期待されている「レムデシビル」に、患者の回復を促進する「明らかな」証拠がみられたと研究者らが話した。

アメリカの国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)が世界各地の病院で行った臨床試験では、レムデシビルを投与された患者は、症状が続く期間が15日から11日に縮んだという。

研究結果の詳細は発表されていないものの、専門家は確認されれば「素晴らしい結果」だと話している。救命や病院の負担減、そして世界各地で行われているロックダウン(都市封鎖)の緩和にもつながる可能性がある。

ただし、COVID-19に対する「特効薬」ではないとの指摘もある。

レムデシビルはもともと、エボラ出血熱の治療薬として開発された抗ウイルス薬。ウイルスが人間の細胞内で増殖するのに必要な酵素を攻撃する。

NIAIDの臨床試験には1063人の感染者が参加。対象者にはレムデシビルかプラセボ(偽薬)のどちらかが投与された。

所長を務めるアンソニー・ファウチ博士は、「データから、レムデシビルに回復期間を短縮する明確ではっきりとした、ポジティブな効果があることが分かった」と説明した。

また、レムデシビルには「新型ウイルスをブロック」することが判明し、「患者を治療できる可能性への扉を開いた」と述べた。

まだ不明確な点も

一方、生死への影響については明確な効果はみられなかった。レムデシビルを投与された患者の死亡率は8%、偽薬では11.6%だったが、この差は統計上では大きなものではなく、レムデシビルの効果によるものかは確定できないという。

さらに、どのような状態の患者に効果があるのかも定かではない。

すでに回復に向かっている人を助けるものなのか、それとも集中治療が必要になる状況を食い止められるのか? 年齢での違いは? 基礎疾患の有無は? 体内でウイルスが増殖する初期段階に治療するべきなのか?

レムデシビルには人命救助とロックダウン解除という2つの期待がかかっているため、詳細が発表されれば、こうした重要な疑問が浮かび上がってくるだろう。

欧州連合(EU)での臨床試験を統括している英ユニヴァーシティー・コレッジ・ロンドンの医学研究評議会・臨床試験室のディレクター、マヘシュ・パーマー教授は、「レムデシビルが広く行き渡るようになるまでには、多くの行程がある。規制当局が認可のためにデータと結果を検討し、それから各国の保健当局でも精査が必要だ」と述べた。

「そうしている間にも、この研究からはより多くのデータ、長期的なデータ、さらにはCOVD-19による死を防げるのかといったデータが出てくるだろう」

もし治療薬によって集中治療を必要とする患者を減らせれば、医療崩壊のリスクは減り、他者と距離を取る施策もそこまで必要とされなくなる。

世界最大規模のCOVID-19治療薬の治験を行っている英オックスフォード大学のピーター・ホービー教授は、「結果全体を見る必要があるが、もしこの結果が確認されれば素晴らしいものだし、COVID-19との戦いにおいても素晴らしいニュースだ」と語った。

「次の段階は、すべてのデータを公表し、レムデシビルへの公正なアクセスを確保することだ」

「特効薬」ではない

レムデシビルをめぐっては先に、中国で行われた臨床試験で患者の病状や血液中のウイルス量に変化はなかったという結果が報告されていた。

これについては、武漢でのロックダウンが成功し、患者が少なかったために臨床試験を遂行できなかったことが原因とされている。

英ケンブリッジ大学病院で感染症コンサルタントを務めているババク・ジャヴィド教授は、「今回の治験のデータは期待ができる。COVDI-19に有効な治療法が確立されていない中、レムデシビルは治療薬として(当局による)迅速承認を得ることができる可能性が十分にある」と話した。

一方で、「この薬が特効薬だということではない。生存に関する効果は30%しか出ていない」と指摘した。

他にも、ウイルスを攻撃すると共に免疫系を抑制するマラリアやHIVの治療薬などが、COVID-19の治療薬として研究されている。

しかし、抗ウイルス薬は症状の初期段階に、免疫に作用する薬は症状が進んだ段階で効果がある可能性もある。


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