相澤冬樹(大阪日日新聞論説委員・記者)

 学校法人森友学園(大阪市)をめぐる事件は不幸な事件だと思う。安倍晋三政権の是か非かに巻き込まれてしまっているからだ。本来、この事件は安倍政権の是非とは関係ないものであるにもかかわらずだ。

 そもそも森友事件とは何だろうか。はじめに、事件の整理から始めよう。

 まず、森友学園に小学校の用地として国有地が売却された。そしてその価格が9億円余の鑑定価格から8億円以上も値引きされて1億3400万円で売られていた。

 「それは正当な値引きなのか?」「国民の財産を不当に安く売ったのではないか?」。これが問題の根源だ。「値引きの是非」に「政権の是非」は本来関係ない。政権を支持しようが批判しようが、正当な値引きは正当、不当な値引きは不当だ。

 ところが、この土地に建つ小学校の名誉校長が安倍首相の妻である安倍昭恵さんだったから話はややこしくなる。昭恵さんは森友学園の教育方針を繰り返し賛美していた。しかも昭恵さん付きで、事実上の秘書のような役割をしていた政府職員が、この土地について財務省に照会していたことも明らかになった。

 首相は「照会しただけだ。便宜を求めていない」と言うが、首相の妻側から照会があったら役人はそれだけで「忖度(そんたく)」する。それが役所の常識ではないだろうか。だからこそ「やはり首相の妻が名誉校長だから不当に安くしたのではないか?」とか「首相自身は関与していないのか?」という野党の追及が高まった。けれども安倍首相は国会で大見えを切った。

 「私や妻が(学校の認可や国有地取引に)関係していたら総理大臣も国会議員も辞める」

 自分も妻も全く関係ないと強調したかったのだろうが、こんなことを言ったら野党は「首相を辞めさせるチャンス」と勢いづくに決まっている。関与の証拠を見つけ出そうと、財務省に対し資料や説明を相次いで要求した。
参院予算委員会で証人喚問に臨む佐川宣寿前国税庁長官(当時)=2018年3月27日、国会(納冨康撮影)
参院予算委員会で証人喚問に臨む佐川宣寿前国税庁長官(当時)=2018年3月27日、国会(納冨康撮影)
 これに対し、財務省の佐川宣寿(のぶひさ)理財局長(当時)は国会で「資料は廃棄しました。ございません」と突っぱねる。だがその2日後に、関連公文書の「改ざん」がひそかに始まっていた。そして現場で改ざんを押しつけられた、財務省近畿財務局の上席国有財産管理官である赤木俊夫さんはその責任の重さに耐えかね、1年後に自ら命を絶った。

 このとき、財務省で改ざんに関する調査報告書の取りまとめにあたった伊藤豊秘書課長(当時)は、このあたりの経緯を指して「安倍首相の答弁と改ざんは関係があった」と赤木さんの妻に説明した。