09年の新型インフルエンザは大事に至らなかったものの、今後はいつアウトブレイク(感染症の突発的発生)してもおかしくない事態にあるという関係者の危機感により、12年に「新型インフルエンザ等対策特別措置法」の成立にこぎつけた。

 だが一方で、医療機器や医師の動員体制をはじめ、肝心なことは一向に進んでいなかった。繰り返すが、この第一義的な責任は各都道府県にある。舛添氏も14~16年は東京都知事であった。

 08年に大阪府知事となった橋下徹氏と日本維新の会は、財政改革のためとして医療施設や救急医療への支援を徹底的に削減した。新型ウイルス対策などは、ことさら進んでいなかっただろう。

 橋下氏から維新代表を引き継いだ大阪市の松井一郎市長は医療現場で防護服が足りないため、代用品と称して雨がっぱの寄付を市民に呼びかけた。だが、そもそも防護服が足りない状況をつくったのはいったい誰なのか、分かっているのだろうか。

 それでも、維新は立憲民主党を世論調査で追い抜いた。また、つい先日まで五輪の強行開催を主張していた東京都の小池百合子知事が世論の風を受けて東京のロックダウン(都市封鎖)を主張し、手際よい感染対策と見事なプレゼンテーション能力のおかげで一挙に評価が高まった。

 人々が何をどうしていいか分からずに不安と混乱に陥ったとき、大向こうを相手にした明晰(めいせき)な言葉、とりわけ批判と断言は多くの人に響くものである。
新型コロナウイルス感染に関し、記者会見する東京都の小池百合子知事=2020年3月25日、東京都庁
新型コロナウイルス感染に関し、記者会見する東京都の小池百合子知事=2020年3月25日、東京都庁
 一方で、安倍政権は火だるまだ。安倍晋三首相は戦時の宰相ではなく、むしろリーダーシップに欠けたために国民を未曽有の災禍に巻き込んだ近衛文麿のようだと、これまでの支持層からも批判の声が浴びせられている。

 けれども、私は安倍首相に極めて同情的だ。おそらく東日本大震災のときと同じように、誰がやっても混乱は起きただろう。

 そして、日本でリベラルと言われる人々は、これまで自分たちがこぞって反対してきた国家による強権的な措置を望んでいる。一方安倍政権は、経済的な混乱はウイルスよりも大きな被害を生み出すと懸念し、経済活動や私権の制限に慎重であり続けている。政治的なスタンスが全く逆転しているのだ。