坂爪真吾(一般社団法人ホワイトハンズ代表理事)

 1218件。これは、新型コロナウイルスの影響が問題になり始めた、今年2月1日から5月8日までの約3カ月間に、私たちが運営している風俗で働く女性のための無料生活・法律相談窓口「風テラス」に寄せられた相談の合計件数である。

 コロナ禍による自粛・休業の影響は風俗業界を直撃し、短期間で収入が激減、あるいはゼロになってしまう女性が全国的に増加した。

 風俗で得られる現金日払いの収入によって生活を維持していた人は、家賃や携帯代などの毎月の支払いや返済ができなくなり、一気に生活困窮の状態に追いやられた。

 メディアでは、お笑いコンビ「ナインティナイン」の岡村隆史の風俗をめぐる失言問題が大々的に取り上げられた。だが、実際の風俗の現場ではほとんど話題にもなっておらず、そもそも誰も気にしていない。

 「それどころではない」というのが、最前線にいる支援者としての率直な感想だ。

 特に4月は、全国各地から1カ月で816件もの相談が寄せられ、連日早朝から深夜まで、相談窓口のLINEやツイッターの通知が鳴りやまない状況が続いた。風テラスでは、弁護士とソーシャルワーカー(社会福祉士、精神保健福祉士)で複数のチームを作り、殺到する相談に対応した。

 コロナ禍の渦中、短期間で1200人を超える風俗で働く女性の相談を受ける中で見えてきたのは、風俗に大きく依存しているにもかかわらず、風俗をないがしろにしている日本経済の危うさだ。
新型コロナウイルス感染拡大で休業が相次ぐ歌舞伎町の店舗=東京都新宿区
新型コロナウイルス感染拡大で休業が相次ぐ歌舞伎町の店舗=東京都新宿区
 風俗業界の人々が休業要請の出ている中でも働かざるを得ないのは、当たり前のことだが、生活のためである。風俗店は一見すると、「不要不急」の娯楽産業の象徴に見えるかもしれない。しかしその実態は、さまざまな事情で「大至急」「今すぐに」現金収入を必要としている女性たちが集まる「切実な」仕事場である。

 風俗店が休業することで一番困るのは、決して利用客の男性ではない。そこで働く女性たちなのである。