数字を見ても、隣国の違いは明らかだ。面積と人口では、スウェーデンはノルウェーの2倍である。ところが、人口100万人当たりの死者数で見ると、ノルウェーは40人前後でほぼ世界平均だが、スウェーデンは300人を超え、総計でも3500人を超えた。

 感染者数も、ノルウェーは約8千人だが、スウェーデンでは約3万人に上っている。もっとも感染者の数値に関して、国内で初めて確認した時期の差はあるが、いずれにしても、スウェーデンでの新型コロナ死者数はノルウェーの15倍の水準に達した。

 厳しい取り組みの甲斐もあってか、ノルウェーでは感染者の伸びは次第に緩やかになり、死亡者も少しずつ減りはじめ、入院患者数も減少を見せるようになった。ノルウェー政府はまず4月中旬から順次、幼稚園、小学校の低学年と試験的に再開させた。少人数でグループを作り、念入りな手洗いやソーシャルディスタンスを徹底させた上で、常に同じグループで行動するという指針のもとで行われた。

 これらと同時に、美容院なども営業を再開するようになった。4月30日には50人以下の集会も許可されるようになり、ソーシャルディスタンスも1メートルに短縮された。

 5月11日からは、残りの小中高の学校授業も再開された。大学はまだ再開の見通しは立っていないが、ノルウェーは少しずつ通常の状態に近づきつつある。

 一方、スウェーデンでは、多少の変動はあっても、新型コロナによる感染者や死亡者の数が徐々に減少しているとは依然として言い難い。連日、メディアから死者数の多さを指摘されるたびに、テグネル氏は当局が入念な研究をしていないことはあり得ず、スウェーデンの政策は他国と「ほんの少し」違っているだけだと訴えている。

 4月中旬に発表された報告によると、スウェーデンの首都ストックホルムにおける集団免疫は早くとも5月に獲得できるということだが、集団免疫は、人口の一定割合がウイルスへの免疫を獲得することで、初めて感染抑制が可能になる。

 ワクチンは未だ開発中であるため、接種はできない。となると、大勢の人がまず新型コロナに感染する必要があるということになる。

 感染しても、健康な人の8割は軽症で済むと報告されているが、危篤状態に陥る可能性があるし、回復後に肺などに後遺症が残るとも報告されている。死亡する人の多くは老人や持病のある人々だが、集団免疫が必要だからといって、これらの人々を感染の危険に晒すことは、人道的に受け入れられることではない。
ノルウェーの首都オスロにある臨海地域、ビョルヴィカ(ゲッティイメージズ)
ノルウェーの首都オスロにある臨海地域、ビョルヴィカ(ゲッティイメージズ)
 このように、スウェーデンは他の北欧諸国とは違う独自のコロナ政策を続けているが、どうしてだろうか。その一因として挙げられるのが、200年以上にわたって直接的な戦争経験がほとんどないことである。

 19世紀以降だけを見ても、北欧諸国は激動の歴史に揺れている。第2次世界大戦で、中立を表明していたノルウェーとデンマークは1940年にナチス・ドイツの侵攻を受け、ともに占領下に置かれた。フィンランドは国境を接していたソ連の侵略に対抗するため、ナチスと手を結び、敗戦国となってしまった。