一方、スウェーデンはナポレオン戦争以降に重武装中立主義を採用した影響で、約200年間戦いのない状況が続いている。ナチスの侵攻の危機に晒された第2次大戦でもなんとか中立を貫き通し、日本のポツダム宣言受諾の連合国への通告も、中立国であるスウェーデンとスイスの日本公使館を通じて行われている。

 スウェーデンのジャーナリストによると、同国が他の国と違うコロナ政策を持っている理由の一つとして、このように200年以上平和が保たれていたことで、かえって危機に対する意識ができていないためだという。要するに、スウェーデン人は「平和ボケ」しているというのだ。

 この意識は、第2次大戦にナチスとソ連に翻弄され、危機に対して常に用意周到なフィンランド国民と対照的である。スウェーデン国民の政府に対する信頼は非常に強く、政府から与えられた情報に対する自己責任も、反発よりむしろ高い忠誠心をもたらす。この忠誠心が正しいことは、歴史が証明してきたという。

 多くの国や医療専門家から批判を浴びているにもかかわらず、スウェーデンは世界保健機関(WHO)から、新型コロナ対策について称賛を受けている。WHOによると、将来における良いモデル国ということだ。

 スウェーデンは全国的な封鎖措置をとっておらず、学校や企業活動もいつも通り続き、外出制限や移動規制も行われていない。もし本格的な第2波が到来するなど新型コロナと長期間の戦いを強いられたら、世界中の国で封鎖を行わずに社会生活を存続させることも考えなければならないが、そのときはソーシャルディスタンスを異なる形で規定しなければならない。

 つまり、現在のわれわれの生活様式を、新型コロナに対応させて変える必要がある。スウェーデンではそれを実際に行っている、とWHOで緊急事態への対応を統括するマイク・ライアン氏は指摘する。

 新型コロナ危機は否定的なことばかりだけではない。今や新型コロナウイルス撲滅は全人類の共通の目標である。戦争とは、国と国が互いに敵味方に分かれて戦うが、この戦争は全世界の人が同じ目標を持ち、共に協力し合って解決するのである。いわば、全人類が同志といえる。

 以前から環境問題への取り組みはさまざまな形で行われていたが、新型コロナ危機の影響で、別のアプローチによる取り組みも検討され始めている。例えば休暇の過ごし方について、今まで、北欧の人々は南国で数週間のバカンスを取ることが多かった。

 しかし、今回の経済的打撃の影響で、航空会社の経営不振に伴う運賃上昇が危ぶまれている。それならば、環境問題も踏まえて、持続可能な休暇の過ごし方を考えるべきだろうという意見が増えてきているようだ。山岳地帯の多いノルウェーでは、山へハイキングに出かけることは日常的なことであるが、これからは山や森の中で休暇を過ごす時間が多くなるかもしれない。
世界保健機関(WHO)で緊急事態対応を統括するマイク・ライアン氏=2019年5月(ロイター=共同)
世界保健機関(WHO)で緊急事態対応を統括するマイク・ライアン氏=2019年5月(ロイター=共同)
 自然に対するアプローチとともに忘れてはならないことが、人間社会のあり方である。新型コロナ危機で、大都市集中一極化の危険性が浮き彫りになった。何よりも、今回の危機を踏まえて民主主義に依った国政運営が求められる一方で、地域社会の重要さも忘れてはならない。デジタル化の推進で社会から孤立する人が増えてきたが、地域社会の充実を図ることで、緩和できるかもしれない。

 今回、世界各国は新型コロナ対策として、ロックダウンや集団免疫をはじめ、さまざまな政策を採用した。ただ、パンデミックが世界で繰り返し起こってきたことは、歴史が証明しているし、新型コロナが終息に向かっても、いつか別のパンデミックが起こることだろう。それまで人類は今回の教訓をよく踏まえ、次の危機が訪れる前に備える必要があるが、果たしてどれだけの国が備えられるのだろうか。