富坂聰(ジャーナリスト、拓殖大学海外事情研究所教授)

 新型コロナウイルス禍の終息後、中国はどこに向かうのか―。日本の一部には、武漢の封鎖解除にこぎ着けた中国が「世界の覇権に動き出す」との観測もあるようだ。

 でも、そんな話題を論じるのは時期尚早だ。新型コロナウイルスにはまだ分からないことも多く、秋以降の感染再拡大も含め、第2波が起こる懸念も残る。

 ただ、習近平指導部が生産再開を急いだのは間違いない。22日から全国人民代表大会を開くことも決めた。

 ウイルスを完封できなくてもコントロールは可能と踏んだからだが、理由はそれだけではない。背後には極めて政治的な思惑も絡む。

 「二つの100年」目標の達成だ。「二つの100年」とは2021年、中国共産党が結党100周年を迎えるに際し、「全面的小康社会」(ややゆとりのある社会)を実現させる。そして、建国100周年の2049年には、中国を「復興」、つまり米国をしのぐ先進国にさせるという二つの公約だ。

 小康社会といっても分かりにくいが、習政権下でこの目標は「国内総生産(GDP)と平均収入を2010年の2倍にし、貧困を撲滅する」と具体化された。

 平時でもハードルの高い目標だが、新型コロナの影響で、今年1~3月期のGDPは既報通り、マイナス6・8%(実質)と大きく落ち込んでしまった。今年、2010年のGDPの2倍を達成するためには年間5・7%の成長率を実現しなくてはならず、絶望的な状況だ。

 しかしもう一つの目標、「貧困撲滅」はまだ間に合うと考えたのだろう。俄然、ニュースの頻度も高まっている。
G20首脳のテレビ電話会議に臨む中国の習近平国家主席=2020年3月、北京(新華社=共同)
G20首脳のテレビ電話会議に臨む中国の習近平国家主席=2020年3月、北京(新華社=共同)
 新型肺炎の感染が落ち着き始めた当初、中国が経済再生の頼みとしたのは貿易だった。政策にも外資優遇が目立った。

 依然として貿易依存度が高い中国ならではの動きだが、国務院は新型コロナでダメージを受けた企業への補助金や減免税の内外格差の是正、新たなネガティブリストの作成など、環境整備に躍起だった。貿易のチャネルを一気に広げ回復の起爆剤にしようと目論んだが、周知のように今度は欧米で感染が爆発、貿易どころではなくなってしまった。