2020年05月18日 18:57 公開

ブラジル最大の都市サンパウロが、新型コロナウイルスの感染拡大で医療崩壊の危機に直面している。ブルーノ・コヴァス市長は、同市の公立病院の病床利用率が90%に達し、2週間以内に満床になると述べた。

サンパウロはブラジル国内でも特に新型ウイルスによる感染症「COVID-19」の患者の多い地域のひとつで、3000人近くが亡くなっている。

ブラジルの保健省は、16日に新たに7938人の感染が確認されたと発表した。

人口約2億950万人のブラジルでは、これまでに24万1000人以上が感染しており、スペインやイタリアを超え、アメリカ、ロシア、イギリスに次ぐ世界4位となった。

16日の死者数は485人。全体では世界で5番目に多い1万6118人となっている。

ただし、ブラジルでは検査が不足しているため、実際の感染者数はもっと高い可能性があると警告する専門家もいる。

右派のジャイル・ボルソナロ大統領は、国内での新型ウイルスの感染拡大への対応について、内外から強い批判を浴びている。

ボルソナロ大統領は17日、首都ブラジリアで支持者や子どもたちと写真を撮った際、大勢と接触。世界中で推奨されている他者と距離を取る施策を、身をもって否定した。

サンパウロ市長の発言

コバス市長は会見で、病院がパンクする前に流行を遅らせるため、厳しいロックダウンの導入に向けた協議をサンパウロ州知事と行っていると説明した。

ブラジルでは州知事が警察を動かす権限を持っているため、ロックダウンの成功には州知事の支援が必須だという。

サンパウロ市の人口は約1200万人。統計によると、市民の大半は他者と距離を取る施策を守っていないという。

サンパウロ州では2カ月近く前から隔離政策が始まっている。企業や学校、公共施設などは閉鎖され、人々は自宅にとどまるよう指示されている。

しかしBBCのケイティー・ワトソン南アメリカ特派員によると、違反者への罰則などはなく、多くのサンパウロ市民が週末に自動車で海岸へ行き、地元の人々の怒りを買っている。

また、義務化されたマスク着用の規則も、ほとんどの人が無視している状態だという。

ボルソナロ大統領の対応は?

サンパウロで支持の高いボルソナロ大統領は、社会的距離を取る施策は経済を壊すだけだと繰り返し主張している。

また、ロックダウンにも反対し続けており、新型ウイルスは「ただのインフルエンザ」で、COVID-19の流行は避けられないものだと発言している。

4月には、州知事が命じたロックダウンに反対するデモにも参加。流行を防ぐための制限は経済にダメージを与え、失業と飢餓をもたらすと話した。

15日には、4月に就任したばかりのネルソン・タイシ保健相が辞任。辞任の前には、ボルソナロ氏によるジムや美容院の営業再開を認める大統領令を公然と批判した。タイシ氏の前任者も、ボルソナロ氏と対立して解任されている。

BBCのキャンディス・ピエット・アメリカ大陸編集長は、新型ウイルス対策をめぐってさまざまな意見が飛び交い、政府からの支援がほとんどない中、自宅待機中のブラジル人はウイルスの感染拡大を抑えられるほど多くないと指摘した。

「病院に来た人しか検査していない」

ブラジルでは検査が不足しているため、同国の感染者数は当局の統計よりもかなり多い可能性があると、複数の専門家が警告している。

サンパウロ医学大学のドミンゴ・アルベス氏はAFP通信の取材で、「ブラジルでは病院に来た人しか検査していない」と話した。

「入手可能なデータからは、実際に何が起きているのかを知るのが難しい。アウトブレイクを押さえ込む実際的な政策がない」

アルベス氏が共同著者を務めた研究では、ブラジルの実際の感染者数は当局の発表より15倍ほど多いと試算している。

アメリカ大陸がパンデミックの中心

南米最大の国ブラジルは、ここ数週間新型ウイルスの流行の中心地となっている。

中南米全体での感染者数は50万人以上だが、ブラジルはその半数近くを占めている。

メキシコでは最近、新しい感染者が急増している。エクアドルでは4月に医療崩壊状態に陥った。

世界保健機関(WHO)はこうした事態を見て、現在はアメリカ大陸がパンデミックの中心になっていると指摘した。

WHOによると3月には欧州が「パンデミックの中心」だった。しかし、欧州では現在、移動の制限などの感染対策が徐々に緩和されている。

(英語記事 Hospitals in Brazil's largest city 'near collapse'