高橋勝也(元都立高教諭、名古屋経済大准教授)

 新型コロナウィルスの猛威は、全国の学校を緊急事態宣言に伴う休校措置に追い込み、長ければ3カ月間、学校に通えていない子供たちがいる。人生の一大イベントと言ってもよい卒業式や入学式、楽しいはずの学校行事は次々と中止になっている。

 そのような中、学校休業長期化を受けて、政府は「9月入学」の検討に入っている。授業のオンライン化は家庭環境や自治体の財政事情などを要因として、家庭、学校、地域間格差を生じているとの指摘がある。

 「9月入学」が実現すれば、全国一律に仕切り直しすることができ、このような問題を解消できるかもしれない。また、留学がしやすくなるとして教育などのグローバル化を進め、日本の国際化の進展を期待する声も大きい。

 「国家百年の計」である教育は、国民の生き方や幸せに直結し、国家や社会の発展の基礎を築く最重要項目であり、政治が主導して改革を推し進めていくべきとの声もある。しかし、教育改革が学校現場を置き去りにしてしまえば、子供たちや先生たちを路頭に迷わせることになる。

 そこで、筆者は初等中等教育教員への緊急インタビューを試みた。その結果、小学校より中学校、中学校より高校の先生の方が、「9月入学」への移行に強い不安を抱いていることが分かった。

 なぜなら、入学試験をはじめとする出口指導(進路指導)が高度化するからである。高校では大学へ向けての入学試験と企業就職へ向けての就職活動への指導が並行して行われている。

 前者は1月中旬のセンター試験(2021年1月実施試験から共通テストへ移行予定)はいつ実施になるのか、各私立大学の入学試験は統一的な時期ややり方で実施してくれるのかなどの不安である。

 後者は就職説明会、内定通知、入社式といった採用スケジュールなどがどうなっていくのかという不安である。加えて、先生たち以上の不安感に襲われるのが、学校に通う子供たちであることを忘れてはならない。
休校で生徒のいない中学校の教室=2020年5月、大津市
休校で生徒のいない中学校の教室=2020年5月、大津市
 センター試験に代わる共通テストにおいて、記述式問題の導入が中止されたことを思い出していただきたい。高校生自身が「これ以上、高校生を混乱させないでほしい」と文部科学省で抗議する姿は、筆者の目に焼き付いている。単純に春に卒業して次のステップに進もうと考えていたところに、「あと半年先の秋に卒業することになるよ!」と言われれば混乱することは目に見えている。