付言すれば、政府主導となる前には経団連が取りまとめていたが、こちらも法的拘束力は特になかった。もっと言えば、大学生の就職活動が定着した大正時代(1920年代)から昭和、平成、令和と年号が変わる中、何度となく就職時期が議論された。しかし、1928年にできた日本初の就職協定も含め、全て法律で定義されたことは一度もない。

 理由は簡単で、企業からすれば採用活動になるが、就職活動を法律で規制することは、集会、結社の自由を制限するかどうか、という話にもなり、相当難しいからだ。前述の通り、1928年の就職協定から約90年間、就職時期を公式に定めても、法制化されたことは一度もない。法的な拘束力がない以上、順守する企業は少数派であり、多くの企業が守るわけがない。

 令和となった現在も全く同じだ。リクルートキャリア・就職みらい研究所の「就職白書2020」によると、選考解禁より前の4年生5月以前に内々定を出した企業は66・5%にものぼる。

 これは学生も同じだ。広報解禁より前の3年生2月に就職活動を始めた学生は65・7%であり、企業側とそう変わらない。6割強の企業・学生が就職ルールを前倒ししており、9月入学に合わせて9月入社に変更しても十分に対応できる。

 ただ、「いくら、4年生5月以前の内々定通知が6割強と言っても、内定者研修などは数カ月から半年はかかる」「9月入学と9月入社を同時に実施するのは無理」という意見もあるだろう。

 そもそも、企業側は9月入学について肯定的だ。経団連は2011年に東京大学が秋入学を議論した際も、支持している。今回の9月入学についても、経団連の中西宏明会長は支持を表明している。

 経団連の中西宏明会長は11日の記者会見で、「海外との連携を考えると、9月入学はごく自然なこと」と歓迎する見解を示した。

経団連の中西宏明会長
経団連の中西宏明会長
 それに、就職時期は過去30年間で6回も変更されている。

1996年以前 広報時期:4年生4~5月 / 選考時期:4年生8月ごろ
1997~2004年(自由化) 広報時期:3年生10月前後 / 選考時期:3年生3月~4年生4月
2005~2011年 広報解禁:3年生10月1日 / 選考解禁:4年生4月1日
2012~2014年 広報解禁:3年生12月1日 / 選考解禁:4年生4月1日
2015年 広報解禁:3年生3月1日 / 選考解禁:4年生8月1日
2016年~現在 広報解禁:3年生3月1日 / 選考解禁:4年生6月1日

※卒業年次ではなく実施年の表記


 時期変更が議論されるたびに、内定者研修の短期化などが指摘されたが、結果的に企業側は対応できている。今回の9月入学についても、合わせる形で9月入社となった場合、企業側は十分に対応できるのではないだろうか。