また、秋季入学が話題になった際に一部で言われていた「一斉入学にすることで教育格差を埋める」というのは、不可能だと私は思う。秋季入学に移行したところで、休校措置中の時間は取り戻せない。

 年度の長さが伸びれば、学習機会が損なわれていない人は伸びた年度分だけ勉強ができるので、アドバンテージが生じる。その差を教育格差とするならば、格差は残念ながら消えない。

 このコロナ禍での学習環境の格差は、リモート授業が可能な学校、学校再開の早い地域の学校、感染者数が減少しづらい大都市圏の学校という順で生じるということになるだろう。この点で教育機会の確保が厳しくなるのは、感染者数が多い各大都市圏かつ、リモート授業が行われない学校に通う世帯が中心になると考えられる。

 今後も感染爆発の危険を回避しつつ、コロナ禍での教育機会の確保をするのであれば、まずは大都市圏の学校で、現在までにリモート授業ができていない世帯に対し、リモート授業が実施できるように環境整備を進めるべきであろう。

 また、しばしばニュースで取り上げられるのがリモート授業の困難性だ。もともと、大手予備校の中でもリモート授業を実施しているところがあり、携帯アプリで授業を配信する企業があるなど、リモート授業には一定の教育効果が期待できることは間違いない。

 しかし、特に小学校低学年の子供たちにリモート授業を実施するとなると、海外では、授業中に子供が通信を切ってしまい、席を立っていなくなる事例があるという。教育番組ほどに素晴らしく作り込まれた授業内容であれば別かもしれないが、小学校低学年の子供たちは画面を1時間、2時間も見てはくれない。

 実際に家庭学習で宿題を大量に渡され、これに四苦八苦しながら取り組んでいる家庭の方ならば、より想像がつくだろう。このように、子供たちの指導を30人に向けて同時に画面越しで授業を行うというのは、かなりの困難が予想される。

 とは言いつつも、現状のコロナ禍において当面の学習機会を確保するには、リモート授業を行うしかない。これを早急に、かつ実のある形で進めるためにも、現場にリソースがあるならば、学習環境の整備に振り分けるべきだと思う。
 
 リモート授業の開始だけでも、学校制度自体に多大な変化が求められる。また、休校を再開するにあたっても、かなりの慎重さと迅速な対応が必要になる。
遠隔授業実施のため、ビデオ会議システム「Zoom」の使い方を研修する県立隠岐島前高の教員ら=2020年4月、島根県海士町(同高提供)
遠隔授業実施のため、ビデオ会議システム「Zoom」の使い方を研修する県立隠岐島前高の教員ら=2020年4月、島根県海士町(同高提供)
 仮に学習機会の確保を最優先に物事を考えるならば、今はできる限りの力で大都市圏の学校では早期にリモート授業の実施環境を整え、再開可能性のある地域では新たな生活様式を学校生活に反映させるべきだろう。

 以上の点を実施するだけでも、今の教育現場の環境からすれば想像を絶する努力がいる。これに加えて秋季入学までも実施するというのは、ついでにやるというには少々重すぎる気がしてならない。