森口朗(教育評論家)

 新型コロナウイルスによる死者数が、欧米諸国と比較して2桁も少ないのに、欧米を模倣して緊急事態宣言を出したことで、安倍内閣は日本の不況をつくり出しました。さらに、日本をつぶすことが目的と化したのか、政府が学校制度を9月入学に移行しようと言い出しました。本稿では、安倍内閣が行おうとしている教育制度改革が、いかに愚かであるかを考察します。

 その前に説明しておきたいのですが、大前提として、私は中長期的に考えたとき、日本も学校を9月スタートにすべきだと考えています。その理由は、日本も学校教育のスタートとゴールを他の先進国にあわせた方がグローバル化による人材の国際化に対応しやすいからです。

 ご存じの方も多いと思いますが、米国、英国、フランス、ドイツといった欧米などの先進国では、学校を9月からスタートさせます。これに対してアジアでは、シンガポールは1月、韓国が3月、日本は4月、タイが5月、フィリピンは6月というようにバラバラです。

 かつて「欧米諸国と日本で学校の年度区切りが異なるから困る」と言っていたのは、国家公務員や大企業社員で家族を連れてその国に転勤する、いわゆる「エリート」だけでした。しかしグローバル化の進展によって、もはや海外で生活する人はエリートだけではなくなりました。

 今のところ、日本は中堅企業でも海外転勤が多くなった程度で済んでいます。しかし、消費増税と緊急事態宣言のために発生した巨大な不景気のせいで、経済力が戦前レベルまで落ち込み、中堅企業の正社員になれないレベルの人が、アルバイト時給の高い欧米諸国に出稼ぎに行く日が来ないとも限りません。

 日本のビジネスパーソンの平均賃金は、アルバイトの時給以上に欧米先進国と差があるので、既に超優秀な人材は最初から欧米諸国の企業に採用されることを目指し始めました。

 このように考えると、日本の学校教育のスタートとゴールを欧米諸国に併せて9月から8月までにするのは、優秀な人からそうでない人まで都合がいいのではないでしょうか。では、なぜその改革を今すべきではないのか、理由が三つあります。

 まずは、教育スタートの遅れがあります。
学校が再開し登校する三重県桑名市立明正中の生徒たち=20205月18日
学校が再開し登校する三重県桑名市立明正中の生徒たち=20205月18日
 緊急事態宣言のせいで入学タイミングが遅れたことをきっかけに、学校を9月スタートにするなら、誕生日が早い子供の義務教育開始は7歳になります。それでは遅すぎます。

 小学校受験が活発になった20世紀末、左派系の教育学者や教育評論家たちは「お受験」と名付けて早期教育の害悪を振りまきました。しかし今では、幼稚園や保育園はもちろん、習い事や小学校受験塾も含む小学校以前の教育の重要性は、教育学の常識になっています。