
2020年05月20日 12:30 公開
世界保健機関(WHO)加盟国は19日、WHOの新型コロナウイルスの世界的流行(パンデミック)対応について、独立した検証委員会を設置することで合意した。
この合意は、WHOがスイス・ジュネーブの本部とオンラインで開いていた年次総会の決議に含まれた。決議案は加盟194カ国の全会一致で採択され、WHOの役割そのものも検証することを決めた。
WHOの新型ウイルス対応は、特にアメリカが強く批判している。
決議案は、欧州連合(EU)が100カ国を代表して提案した。
決議の内容
決議は、WHOの国際的な新型ウイルス対応について、「公平で独立した全般的な評価」が必要だとした。
新型ウイルスの感染症(COVID-19)のパンデミック対応の経過も検証される。WHOに対しては、健康上の危機と宣言するのが遅かったとの批判が出ている。
決議はまた、各国が治療やワクチンを「透明性が高く公平な方法でタイミングよく活用」できることを要求。WHOに対し、「ウイルスの発生源と人間への感染ルート」を調査するよう求めている。
WHOへの圧力
ドナルド・トランプ米大統領はWHOを中国の「操り人形」と呼び、拠出金の支払いを停止した。アメリカはWHOにとって最大の資金拠出国となっている。
トランプ氏は中国について、大流行の発生を隠そうとしたと非難している(中国はこれを強く否定している)。またWHOに対しても、中国の責任を明確にしていないとしている。
トランプ氏は18日、WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイエスス事務局長に送った書簡を公表。アメリカの立場を鮮明にした。
https://twitter.com/realDonaldTrump/status/1262577580718395393
同日のWHO年次総会では、米保健福祉省のアレックス・アザール長官が強い口調でWHOを非難した。
「今回の大流行が手におえなくなった主要な理由を、私たちは率直に認めなくてはならない。世界が必要としていた情報を、この組織(WHO)は入手できなかった。それが多くの犠牲者を生んだ」
トランプ氏は今年11月に、再選がかかる大統領選挙が控えている。同氏のWHO批判は、アメリカ国内における新型ウイルス対策への非難の矛先を変えようとするものだとの見方が出ている。
米ジョンズ・ホプキンス大学の集計(日本時間5月20日午前時点)では、アメリカの新型ウイルスの死者は9万人、感染者は150万人を超え、ともに世界最多となっている。
ただ、WHOの新型ウイルス対応の検証を求める声はEUやイギリス、オーストラリア、ニュージーランドなどからも上がっている。
EUのヴァジニ・バテュ=アンリクソン報道官は、何点かの重大な質問への回答が必要だと述べた。
「今回のパンデミックがどのように拡大したのか? どんな疫学がみられるのか? これらは私たちが今後、同様のパンデミックを防ぐために極めて大事だ」
同報道官は同時に、いまは「責任のなすり付け合い」をする時ではないと述べた。
WHOの反応
WHOのテドロス事務局長はすでに、WHOのパンデミック対応の検証に同意している。一方で、末端に至るまでの点検が必要だとする意見には反対している。
テドロス氏は、独立した検証が「できるだけ早期に」始まるとしている。同氏はまた、WHOの強化を求めている。
中国の反応
新型ウイルスの最初の感染者は、昨年12月に中国・武漢市で確認された。新型ウイルスは動物から人間へと感染した後、食品市場から感染が拡大したと広く報じられている。
中国は初期段階で感染を隠そうとしたと批判された。
米有力議員の一部は、コウモリのコロナウイルスを研究していた武漢市の研究所が発生源だとの見方を示している。中国側はこれを否定しているほか、欧米の専門家らも米議員らの見解に疑念を表明している。
中国は、同国における流行の推移を明らかにしていると主張している。1月には新型ウイルスの遺伝情報を公表し、WHOには素早く情報を提供していると説明している。
中国の習近平国家主席は18日、WHOの年次総会で演説し、同国が「公明性と透明性をもって」行動してきたと述べた。また、いかなる検証もパンデミックが落ち着いてからなされるべきだと訴えた。
趙立堅報道官は19日、北京で開かれた記者会見で、アメリカは責任逃れをしようと中国を中傷しようとしていると述べた。
新型ウイルスの感染者は世界で480万人を超え、死者は30万人以上となっている。
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