
2020年05月21日 13:52 公開
南アフリカで、2020年末までに少なくとも4万人が新型コロナウイルスで死亡する可能性があると、同国の科学者グループが警告している。
この見通しは、新型ウイルスのアウトブレイク(大流行)をめぐり南アフリカ政府に助言を行う、学者と保健の専門家のグループ「COVID-19モデリング・コンソーシアム」が示したもの。
米ジョンズ・ホプキンス大学の集計によると、人口約5700万人の南アフリカでは、これまでに1万8000人以上が感染し、339人が死亡している。対照的に、人口が4700万人弱のスペインでは23万2000人以上が感染し、2万7800人以上が死亡している(いずれも日本時間21日正午時点)。
しかし、「COVID-19モデリング・コンソーシアム」の見通しによると、南アフリカは今後数カ月で感染者数と死者数の急激な増加に見舞われる可能性があるという。
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同グループによる報告書は、ズウェリ・ムキゼ保健相との会議で公表された。同国政府の新型ウイルス対応をめぐっては、透明性に欠けているとの批判が起きていた。
死者4万人、集中治療室がひっ迫と
今回公表された見通しは、現在敷かれている制限をシリル・ラマポーザ大統領が発表どおり6月1日に緩和すると仮定した場合の内容になっている。また、より多くのデータが入手できるようになれば見通し内容が変わる可能性がある。
「楽観的シナリオ」では、8月下旬までに感染者数は10万人近くに達し、11月までの累計の死者数は約4万人に上る可能性があるという。
「悲観的シナリオ」の場合は、感染者数は8月にピークに達し、約12万人に。11月までに合わせて約4万5000人が死亡する可能性があるという。
報告書はさらに、COVID-19発症者数が合わせて120万人に達する可能性があるとしている。集中治療室は、数週間以内にひっ迫するおそれがあるという。
厳格なロックダウン
ラマポーザ大統領は3月、世界的にも厳格なロックダウンを導入した。ほとんどの労働者が在宅勤務を命じられたほか、たばこやアルコール販売、ジョギングやサイクリング、犬の散歩が禁止された。
こうした制限は、新型ウイルスの感染拡大を遅らせることにつながったとして評価されている。
5月1日、新型ウイルス対策の制限が「レベル5」から「レベル4」に引き下げられ、市民は午前6時~9時の運動が認められるようになった。
一方で、市民は今も公共の場でのマスク着用や、社会的距離を保つことが求められている。
<解説>経済再開と感染対策をてんびんにかける南アフリカ――ノムサ・マセコ、BBCニュース(ヨハネスブルグ)
南アフリカでは、COVID-19や科学的対立をめぐる政治が激しさを増している。野党・民主同盟は、厳しいロックダウン措置は不当であり、アルコールやたばこの販売禁止は解除されるべきだとして政府を訴えている。
政府側も1つにまとまっているわけではない。ラマポーザ大統領は今月、学校を再開し、より多くの人が6月初めから仕事を再開できるよう、ロックダウン措置を現行の「レベル4」から「レベル3」に引き下げる方針だと明かした。
しかし、ムキゼ保健相は気が進まないようだ。世界保健機関(WHO)によると、感染者数が日々増加し続けている中で、同国はレベル3に制限を引き下げる段階にはないと、ムキゼ氏は主張している。
食料安全保障や失業、経済の問題を考慮しなければならない政府にとって、感染対策と経済をてんびんにかけなければならない状態といえる。一部の科学者は、現在の緩和では新型ウイルスの感染拡大にほとんど影響を及ぼさないとして、ロックダウン措置をレベル2までに迅速に引き下げるよう政府に求めている。
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