一方で、デモ隊側と一般市民のトラブルでは死者が出ている。デモ隊が親中派とみられる一般市民とトラブルになり、レンガを投げ合う展開になった。

 すると、たまたまそこに居合わせてしまった70歳の清掃員の頭部にそのレンガが直撃した。この清掃員は後に死亡し、デモ隊の15~18歳の男女5人がレンガを投げたとして逮捕されている。

 親中派とされて破壊や暴力による攻撃を受けるのは一般市民だけではない。そこには、日本でおなじみの企業の名前もある。

 徹底的に攻撃を受けたのは、牛丼チェーンで有名な吉野家である。香港のスタッフが香港公式SNSアカウントで民主化デモに賛同し、警察を揶揄(やゆ)するようなコメントを書き込んだ。

 この書き込みは政治的なものであるとして、経営側により削除された。だが、これに民主派の若者は言論弾圧だとかみついた。

 加えて、吉野家のフランチャイズ(FC)店を展開する合興集団(ホップ・ヒン・グループ)の経営者が親中派とみなされていたことも拍車をかけ、香港吉野家は徹底的な攻撃対象となり、破壊された。

 他にもデモ隊に批判的だということで攻撃されたのは美心集団(マキシム・グループ)だ。この企業が香港でFC展開する日本の元気寿司や、東海堂(アローム・ベーカリー)も破壊されつくした。

 スターバックスコーヒーも、香港でのFC展開を美心集団が行っているために攻撃対象となった。暴徒と化したデモ隊が、親中派なら何をやってもいいとばかりに、店内を破壊し火をつける映像が、香港のテレビで多数流された。
経営が親中派や大陸資本とみなされるとこのように破壊されてしまう(筆者撮影)
経営が親中派や大陸資本とみなされるとこのように破壊されてしまう(筆者撮影)
 洋菓子メーカーの一件は、こうした情勢の中で生まれたものだった。香港で親中派とみなされれば、法治が及ばない破壊と暴力に晒(さら)されることを、現地に進出している企業ならば皆知っていることだ。当然洋菓子メーカーの経営陣も知っていただろう。それゆえに対応は早かった。

 支社長が香港の民主派シンパに身バレしてしまったことで、洋菓子メーカーの日本本社はすぐにフェイスブックページで謝罪文を掲載し、支社長の更迭と帰国を命じたことを告知した。この対応は致し方ないだろう。このままでは、デモ隊の暴力の刃が向くことは間違いないからだ。

 香港のネット上では「この日本人支社長はデモ隊のことを『ゴキブリ』と言った」と炎上しながら広められている。ただし、支社長はこの発言をしていないと述べている。香港の民主派シンパが「これが証拠だ」とするツイートもあるが、どうやら日本語が分からないのだろう、そんなことはどこにも書いていない。しかも、真偽を誰も確認していない。今の香港ではよくある話である。

 だが、そもそもこの洋菓子メーカーの騒動は匿名で書いたものだ。このようなちょっとした書き込みがここまでのことになるというのは、いったいどういうことか。

 書いた本人は、せいぜい茶化しただけであるし、それ自体は言論の自由の範囲である。差別的な発言であったり、名誉を毀損(きそん)したり、犯罪を示唆するものでもない。

 実を言うと、私自身も同様の体験を既に受けている。