
2020年05月23日 12:44 公開
英医学誌ランセットは22日、ドナルド・トランプ米大統領が新型コロナウイルスの感染症「COVID-19」予防のために服用していると発言した抗マラリア薬「ヒドロキシクロロキン」について、患者の死亡リスクを高めるとする研究結果を掲載した。
アメリカやスイスの研究者たちの報告によると、ヒドロキシクロロキンを患者に投与しても治療効果はみられなかったという。
ヒドロキシクロロキンはマラリアやループス腎炎、関節炎などの治療には安全に使用できるが、COVID-19への効果は実証されておらず、複数の公衆衛生当局が心臓に悪影響を及ぼす恐れがあると警告している。
しかし、トランプ大統領はCOVID-19の治療薬になり得ると繰り返し主張していた。今月18日には予防のために服用していると明かした。
抗マラリア薬投与で死亡率18%
この研究では、新型ウイルス患者9万6000人のデータが用いられた。このうち約1万5000人が、ヒドロキシクロロキンあるいはそれに類するクロロキンを、単独もしくは抗生物質との併用で投与されていた。
その結果、抗マラリア薬を使わなかった患者に比べ、使った患者は入院中に死亡する確率が高く、心拍異常がみられたという。
致死率は、ヒドロキシクロロキンを投与された患者では18%、クロロキンでは16.4%、これらを投与されていない場合は9%だった。ヒドロキシクロロキンあるいはクロロキンを抗生物質と併用で投与された場合の致死率はさらに高かった。
研究者たちはヒドロキシクロロキンを臨床試験以外で使用すべきではないと警告している。
トランプ氏は、自分は新型コロナウイルス陽性ではないが、「プラスの効果」があると思うのでヒドロキシクロロキンを服用していると発言していた。
医療者4万人に臨床試験も
果たしてヒドロキシクロロキンでCOVID-19を防げるのか、臨床試験が進められている。新型ウイルス患者と接触している欧州やアフリカ、アジア、南米の医療従事者4万人以上が、臨床試験の一環としてこの薬を投与されることになっている。
ホワイトハウスの新型ウイルス対策タスクフォースの調整官、デボラ・バークス医師は、ランセット掲載の研究結果について問われると、米食品医薬品局(FDA)はこれまで、抗マラリア薬を新型ウイルス予防あるいは治療に用いることについて「非常に明確」に懸念を示してきたと述べた。
世界保健機関(WHO)の米州支部「汎米保健機関」(PAHO)のマルコス・エスピナル博士は、新型ウイルス治療にヒドロキシクロロキンの使用を推奨する臨床結果は1つもないと強調している。
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