2020年05月23日 13:09 公開

今年秋の米大統領選で野党・民主党の候補になる見通しのジョー・バイデン前副大統領(77)は22日、自分ではなくドナルド・トランプ米大統領に投票しようか少しでも考えているようなアフリカ系アメリカ人の有権者は「黒人じゃない」と発言した。民主党にとって伝統的に、アフリカ系有権者は重要な支持基盤なだけに、バイデン氏と民主党は釈明に追われている。

失言が多いことでも知られるバイデン氏は22日、黒人の間で人気のラジオ司会者によるインタビューで、自分は黒人コミュニティーと以前から強い結びつきがあると強調。今年3月の民主党予備選でも、民主党支持者の6割以上がアフリカ系のサウスカロライナ州で圧勝したことに触れた。

それまで苦戦が続き、撤退もうわさされていたバイデン氏は、このサウスカロライナ圧勝によって一気に挽回した。それだけに、黒人有権者の支持はバイデン氏にとって不可欠なものと見られている。

サウスカロライナ予備選についてバイデン氏はラジオで、「自分は州の全ての郡で勝った。黒人票の得票率は、バラクを含めて今まで誰も得られなかったほどだ」と、バラク・オバマ前大統領を引き合いに出して、自分が黒人有権者から圧倒的に支持されたことを強調した。

18分間のインタビューの終盤、副大統領候補には白人のエイミー・クロブシャー上院議員を検討しているのではないかと繰り返し尋ねられると、バイデン氏は副大統領候補に複数の黒人女性も検討していると強調。バイデン氏はすでに、副大統領候補には女性を選ぶと約束している

側近がそろそろ時間だと割って入り取材を終わらせようとすると、人気司会者のシャーラメイン・ザ・ゴッド氏は、「黒人メディアにそんなことしちゃだめだ」と抗議した。

するとバイデン氏は、「白人メディアにも黒人メディアにも同じようにするよ」と答え、自宅に整えた放送スタジオを妻が使う番なのだと説明した。

シャーラメイン氏はバイデン氏に、まだ質問がたくさんあるのでインタビューの第2弾の実現を呼びかけた。

これに対してバイデン氏は、「僕を支持するのかトランプを支持するのか、なかなか決められないっていうなら、その人は黒人じゃないよ」と答えた。

シャーラメイン氏のこの番組「ブレックファスト・クラブ」は全米で放送され、毎月のリスナーは800万人以上。

バイデン氏はインタビューの後、黒人ビジネスリーダーたちとの電話会議で、発言は「軽率」だったと釈明。

「アフリカ系アメリカ人のコミュニティーに応援してもらって当たり前だなど、そんなことは一度も決して思ったことはない」

こう述べた上でバイデン氏は、「軽口を叩くべきではなかった」と認め、「自分の人種や宗教や経歴がこうだから誰に投票しなくてはならないなど、そんなことは決してない」と強調した。

この発言に先立ち、米クイニピアック大学が公表した世論調査の結果によると、黒人有権者の81%がバイデン氏を支持すると答えた。トランプ氏を支持するという回答は3%で、残りは「分からない」と答えた。

各陣営の反応は

バイデン選対本部のシモーン・サンダース顧問は、バイデン氏の発言は「冗談だ」と説明。

「副大統領が何を言ったのか、はっきり確認しましょう。アフリカ系アメリカ人コミュニティーと自分のこれまでの関係について、いつでもどこでもトランプのそれと比べてもらいたいと、そう言っただけです」

トランプ陣営のカトリーナ・ピアソン顧問は、バイデン氏の発言は「人種差別的で、相手の人間性を奪うものだ」と批判。「77歳の白人男性の自分が、黒人の人たちにどう投票しろと命令できると本当に思っている」のだと述べた。

アフリカ系で与党・共和党所属のティム・スコット上院議員も「これほど傲慢で人を見下した発言を聞くのは久しぶりだ」と、保守系フォックスニュースに話した。

バイデン氏が属する民主党側からも、発言を批判する声が上がっている。ビル・クリントン元大統領の元側近、キース・ボイキン氏は、「もちろん黒人にとって、人種差別者トランプよりバイデンの方がはるかにまともな選択肢だ」と述べた上で、「それでも白人が黒人に、黒人とはこうするものだと言うなどあり得ない。バイデンはこれから自分自身の行動で、我々の票を得る資格を示さなくては」と苦言した。

バイデン氏の発言に「激怒している」という有権者のビデオも、広く拡散された。ディオン・ジョーセフさんは、「だからってもう片方に入れると言ってるわけじゃない(中略)共和党は自分たちのために何もしてくれない。自分が問題視しているこれはたったひとつの出来事だが、ジョー・バイデン、あなたの今日の発言は、有権者として今まで聞いたことがないほど人種差別的で人を見下したものだった。自分が黒人男性としてどういう人間か、それは誰に投票するかによって決まることじゃない」と強く批判した。

https://twitter.com/ofcrdeonjoseph/status/1263961864687386624


セクハラ疑惑では女性の弁護士辞任

バイデン氏が上院議員だった1993年に性的暴行を受けたと元スタッフが名乗り出ている問題では、著名弁護士が弁護を辞任した。

複数の「#MeToo」の訴えを担当してきたダグラス・ウイグドー弁護士は21日、タラ・リード氏の弁護人を辞任すると発表した。弁護士は、これはリード氏の信用性とは無関係のことで、一部のマスコミがリード氏の信用を失墜させようとしていると批判した。

上院の廊下でバイデン氏に暴行されたと訴え出ているリード氏について、その経歴を疑問視する報道がアメリカでは相次いでいる。

ワシントン州シアトルのアンティオック大学で学位を得たと履歴書に書かれていたものの、同大学広報は米紙ニューヨーク・タイムズにその事実はないとコメントした。

リード氏は、上院議員だったバイデン氏の法務顧問だったと発言していたが、実際にはスタッフ助手だった。

一方で、シアトル大学は米政治ニュースサイト「ポリティコ」に、リード氏は同大学で法学の学位を修めたと話している。

リード氏は過去に複数の家庭内暴力裁判で専門家証人として証言していた。その担当弁護士たちは、リード氏に経歴詐称の疑いがあるとして、裁判のやり直し請求を検討しているという。

(英語記事 Biden: Black voters considering Trump 'ain't black'