2020年05月24日 12:11 公開

イギリスで新型コロナウイルス対策に厳しいロックダウン(都市封鎖)が実施されている最中、ボリス・ジョンソン首相の上級顧問ドミニク・カミングス氏が、家族と共に国内を400キロ以上移動し親族を訪問していたことが英紙ガーディアンなどの報道で明らかになり、問題になっている。

カミングス氏は、妻がCOVID-19を発症したため、4歳の息子の面倒を見てもらうためだったとして、辞任するつもりはないと反論。ジョンソン内閣の閣僚も、カミングス氏を擁護している。

イギリスでは3月24日からロックダウンが実施され、政府は同居していない家族や親類とも会うのを控えるよう呼びかけてきた。違反者には罰金が科せられる。

カミングス氏がロンドンから北東部ダラムへ移動した正確な日付は明らかになっていないが、ダラム警察は3月31日に、カミングス氏が州内にいることを把握し、翌日にカミングス氏の父親に話を聞いたと発表している。

その際にカミングス氏の父は警察に、「息子がロンドンからイングランド北東部へ移動し、敷地内で自主隔離していると認めた」という。

カミングス氏は23日、報道陣に対して、自分は「まともに、合法的に」行動したと反論。政府が国民にロックダウン順守を呼びかけ、そのため大勢が家族に会えず、場合によっては看取ることもできずにいる状況で、首相顧問の自分が両親や親類に会いに行ったことは「傍から見てどうか」と問いただされると、「見た目なんか誰が気にする? 大事なのは、適切に行動するかだ。おたくらがどう思うかじゃない」と答えた。

さらに、辞任を考えるかどうか聞かれると、「もちろんしないよ」と答えた。

カミングス氏は続けて、「そのことについてもおたくらの予想は、ブレグジット予想と同じような精度だろう。あれについて皆さんの予想がどれだけ正確だったか、覚えてるか」と皮肉を付け加えた。

カミングス氏は、ブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)を決めた2016年の国民投票に向けて、離脱派運動の戦略担当者だった。ジョンソン内閣が発足すると上級顧問となり、昨年12月の総選挙でも与党・保守党圧勝の立役者になった。

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野党スコットランド国民党やスコットランド労働党などは、カミングス氏の辞任もしくは罷免を求めている。最大野党・労働党は辞任は求めていないものの、首相官邸の説明からは「疑問の方が多く残った」と批判。ロックダウン中に自分の上級顧問がロンドンからダラムへ移動すると、首相がいつ知ったのかも不明だと指摘している。

労働党のレイチェル・リーヴス影の内閣府担当相は、「自分たちに対するルールとは別のルールが、首相の最高顧問には適用されるなど、イギリスの人たちは想定していない」と批判した。

英政府はこの日、22日に新しく282人が新型ウイルスで死亡したと発表。新型コロナウイルスによる感染症「COVID-19」で死亡が確認された人は、イギリスではこれで3万6675人に達した。

首相官邸で毎日開かれている定例会見でこれを発表したグラント・シャップス交通相は、カミングス氏が「家族のいるダラムにいた」と認めた。さらに、「危機の最中には誰でも、自分を助けてくれる家族の近くにいたいと願うものだし、この場合もそうだったのだと思う」と述べた。

なぜロンドンの自宅近くで手伝ってくれる人を探さなかったのかなど、カミングス家の「個人的状況については承知していない」と答えた。

政府のロックダウン政策に首相上級顧問の行動が合致するのか質問されると、交通相は「大事なのは、ロックダウン中は誰もが自分の場所にとどまることだ。ただし政府ガイダンスは、子供と暮らしている場合はできる限り助言に従うよう指示している。状況によっては全ての措置が可能ではないことも、承知している」と述べた。

さらに交通相は、ロックダウン措置の最善の実施方法について「決めるのは個人次第だ」と話した。

シャップス氏はさらに、ジョンソン首相はカミングス氏を「全面的に信頼」していると述べた。ジョンソン氏自身はまだこの件について発言していない。


首相官邸は、カミングス氏の行動について、妻がCOVID-19と疑われる症状を示し、自分も具合が悪くなるおそれが高いと懸念したため、子供の面倒をみてくれる親類のもとに身を寄せたのだと説明。両親や姉妹たちの家の近くに滞在し、姉妹やめいたちに食料や日用品を玄関外まで届けてもらっていたのだという。

閣僚も次々にツイッターなどで、カミングス氏は「家族を守ろうとした」のだと擁護している。

ガーディアン英紙デイリー・ミラーが今月22日付記事でカミングス氏の行動を伝えると、首相官邸は当初、ダラム警察が本人や家族に事情を聞いていたという報道内容を否定していた。

しかし、ダラム警察は3月31日にカミングス氏の移動を把握し、翌日に父親に事情を聞いていたことを発表。ダラム警察のスティーヴ・ホワイト本部長は、政府のロックダウン政策の「精神そのものに照らせば」カミングス氏の行動は「きわめて不見識だった」と述べた。

ジョンソン首相は3月23日夜にロックダウン実施を発表した際、「同居していない家族とは会わないように」と呼びかけていた。

カミングス氏は3月30日の時点で、COVID-19のような症状が出ているため自宅で自主隔離中と伝えられていた。これに先立つ3月27日に、首相官邸はジョンソン首相が新型コロナウイルス陽性だと発表していた。


イングランド医務副主任のジェニー・ハリース氏は官邸会見で、「政府のガイダンスにはどれも、常識に応じた運用という要素が伴う。子供や大人を守るという側面もこれに含まれる」と述べ、「命が危険にさらされている」極端な状況ならばロックダウン中の移動も正当化されると話した。

カミングス氏が妻子とダラムに滞在していた3月31日の時点で、イギリス政府は市民に次のような指針を示していた――。

  • 自主隔離のため、あるいは休暇のため、別荘や別宅を訪れない
  • 別の家で滞在するために、自宅を離れない
  • 移動先の地域社会や救急・医療などに負担をかけないよう、自宅を離れない

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