2020年05月25日 12:16 公開

新型コロナウイルス対策でイギリス政府が3月下旬から実施している厳しいロックダウン(都市封鎖)の最中に、ボリス・ジョンソン英首相の上級顧問、ドミニク・カミングス氏が親類のもとへ国内を400キロ以上移動していた問題で、ジョンソン首相は24日、カミングス氏の行動は正しかったと擁護した。野党だけでなく一部の与党議員からも、カミングス氏の辞任を求める声が上がっている。

ジョンソン首相は定例会見で、カミングス氏が幼い息子の世話をしてもらおうと両親や姉妹のいる北東部ダラムまで移動したのは、「自分と妻が2人とも、新型コロナウイルスで何もできなくなる」という事態を前に、「ほかに選択肢がなかった」ことだと述べた。

「あらゆる意味で、彼の行動は責任ある、合法で誠実なものだった」とジョンソン氏は擁護した。

首相はこの日の定例会見で、イングランドでは予定どおり6月1日から段階的に学校を再開すると発表した。

さらに首相は、前日からさらに118人が国内で新型ウイルスによって死亡したと明らかにした。イギリスの死者はこれで3万6793人になった。

与党からも批判

カミングス氏がロックダウン中にロンドンから北東部ダラムへ移動していたことは、英紙ガーディアン同デイリー・ミラーの報道で明らかになった。移動の正確な日付は明らかになっていないが、ダラム警察は3月31日に、カミングス氏が州内にいることを把握し、翌日にカミングス氏の父親に話を聞いたと発表している。

その際にカミングス氏の父は警察に、「息子がロンドンからイングランド北東部へ移動し、敷地内で自主隔離していると認めた」という。

さらに24日には英紙オブザーヴァー同サンデー・ミラーが、カミングス氏はダラム滞在中の4月半ばに約50キロ離れた観光地を訪れていたようだと報じた。

これについてジョンソン首相は、「一部」の内容は「明らかに事実と異なる」と述べた。

首相は、カミングス氏と24日に「長時間にわたり」話し合ったと言い、カミングス氏の行動は「父親として、親として、誰もが抱く本能に沿ったもの」だったとして、「それを失点にするつもりはない」と話した。

「ドミニク・カミングスと家族は、子供の世話をするにあたり大変な事態に置かれていた。その状況を見れば、彼の行動は十分に理解できる(中略)子供の世話をしてもらうため最善の方法を検討した結果、それには移動が必要だったというわけだ」

4月中にダラムから約50キロのバーナード城へ行ったという報道について聞かれると、首相はカミングス氏が14日間の自主隔離中「責任をもって正しく行動した」と答えた。

一方で最大野党・労働党からは、サー・キア・スターマー党首がジョンソン氏を批判。カミングス氏の行動を首相が不問にするのは、「イギリス国民が重ねてきた犠牲に対する侮辱だ」と非難した。

スターマー党首はBBCに対して、「今回のことは首相にとって大きな試練で、結果は落第だ」と発言。「国中で何百万人もの人が、身を引き裂かれるような苦しい選択を余儀なくされた。親類を訪問しないとか、葬儀に参列しないとか。今日の首相の回答よりもっとまともな答えを、国民は聞く資格がある」。

スターマー党首はさらに、もし自分が首相だったなら、カミングス氏を罷免していると述べた。

労働党は事実関係について急ぎ真相を明らかにする調査を求めた。

与党・保守党からも、一部の議員がカミングス氏の行動を表立って批判した。

サー・ロジャー・ゲイル下院議員(保守党)はBBCラジオに対して、「首相が周囲にどういう人を置くか、それは首相が決めることだ。しかしこの件について、首相の判断には問題があると思う。ルールの解釈を事後にこうして変えてもいいのだなど、ほとんどの人は受け入れないと思う」と述べた。

科学者の間からも、懸念の声が上がっている。セントアンドリュース大学のスティーヴン・ライヒャー教授(社会心理学)はパンデミック中の行動科学について政府に助言してきたが、首相発言に「落胆」したとBBCに述べた。

公衆衛生の対策を維持するには国民と政府の間の信頼感が不可欠だと、教授は指摘。「一部の人によってルールが違う、こちらとあちらでは違うという意識が生まれてしまうと、信頼は得られない」と述べた。

イングランド国教会からも、複数の主教がカミングス氏を擁護する政府を強く批判。リーズ主教のニック・ベインズ牧師は、首相が「国民にうそをつき、見下し、ばかにしている」と述べた。ブリストル主教のヴィヴィエン・ファウル牧師も、首相が「国民を尊重していない」と批判した。

(英語記事 Boris Johnson backs key aide Dominic Cummings in lockdown row