2020年05月25日 13:06 公開

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相(70)が収賄罪などに問われた裁判の初公判が24日、エルサレム地方裁判所で開かれた。ネタニヤフ氏は新政権を発足させたばかり。

イスラエルで現職の首相が刑事裁判に臨むのは初めて。ネタニヤフ氏は収賄、詐欺、背任の罪に問われており、すべてを否認している。

法廷に姿を見せたネタニヤフ氏は、自分が起訴されたのは「あらゆる手を使って自分を失墜させる」ことを目的としたものだと主張した。

同氏は前週、イスラエルでは珍しい連立政権のトップとして首相職に就いた。

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イスラエルでは過去1年以内に3度の総選挙があったが、単独過半数を獲得した政党がなかった。これを受け野党連合トップのベニー・ガンツ元軍参謀総長は、ネタニヤフ氏の連立政権への協力に同意した。

ネタニヤフ氏に対しては野党などから辞任要求が出ているが、同氏は公判中に辞めるつもりはないとしている。

右派政党リクードを率いるネタニヤフ氏は2009年から首相を務めており、イスラエル最長の政権となっている。同氏は1996~1999年にも首相の座に就いた。

裁判所で何があった?

ネタニヤフ氏はこの日、裁判所に到着すると記者団に、「私は背筋を伸ばし、堂々とここにいる」と述べた。

また、「右派の強力な首相である私を引きずりおろさなくてはならないなら、何でもあり得る」と反発した。

この日の公判は1時間ほどで終わった。ネタニヤフ氏は裁判官らに、「起訴状を読み理解している」と述べた。

地元メディアによると、マスクを着けたネタニヤフ氏は記者団が法廷から出るまで、被告席に腰を下ろすのを拒否したという。

同氏の弁護団は、弁護の準備に数カ月が必要だとしている。次回公判は7月19日に設定された。

首相の起訴内容は?

ネタニヤフ氏は、「ケース1000」、「ケース2000」、「ケース4000」と呼ばれる3つの事件で起訴されている。

  • ケース1000-詐欺および背任:大物実業家らに便宜を図る代わりに、シャンパンや葉巻といった贈答品を受け取っていたとされる
  • ケース2000-詐欺および背任:大手新聞イェディオト・アハロノトに対し、自身に好意的な記事の掲載と引き換えに部数の拡大を手助けすると持ちかけたとされる
  • ケース4000-収賄、詐欺および背任:首相や通信相在任中、大手通信社ベゼクの大株主シャウル・エロヴィッチ氏に有利な規制を促進する見返りに、同氏のニュースサイトWallaに自身に好意的な報道を要求したとされる

ネタニヤフ氏はこれらすべてを全面的に否認。裁判は政敵による「魔女狩り」だとし、汚名をすすぐと表明している。

首相と刑事被告人の立場は両立できる?

イスラエルの法律では、首相は刑事裁判の被告となっても辞職する必要はない。ただ、前例はない。

エフード・オルメルト前首相は2008年、汚職容疑の捜査対象となったことを受け辞任した。しかし厳密には、翌年の総選挙でネタニヤフ政権が樹立されるまでは首相の座にとどまった。

野党連合のガンツ氏とは、1年半後の2021年11月に首相職を引き継ぐことで合意している。ネタニヤフ氏はそれまで首相を続け、その後はガンツ政権で副首相として政権内にとどまる見込み。

イスラエルにとってどんな意味がある?

イスラエルにとっては、最高権力者の首相が現職として職務に当たりながら、容疑を晴らして刑事罰を受けないよう努力することとなる。

こうした状況について野党のヤイール・ラピッド党首は、政策への影響はないとみられるものの、「恥ずべきこと」で「この国の精神にとっておぞましい」ことだと述べた。ネタニヤフ氏はヨルダン川西岸のイスラエル人入植地を近々、併合しようとしており、その際にはパレスチナ側の猛反発は必至とみられている。

イスラエル国内の世論は割れている。ネタニヤフ氏に批判的な人は、裁判になれば首相を続けることはできないと指摘。一方、同氏の支持者とリクードは、同氏は民主的に選ばれており、辞任を強いられるべきではないとしている。

オルメルト前首相は2009年に裁判が始まり、有罪判決が言い渡された。しかし、法廷闘争が長引いたため、刑に服したのは2016年からだった。

(英語記事 Israeli PM Netanyahu goes on trial for corruption