現在コロナウイルス患者を受け入れている自衛隊中央病院の看護官は、そのほとんどが自衛隊の幹部である。当然、階級章をつけて所定の基本教育を受けており、その中にはバイオを含むCBRN(Explosiveを除いたもの)教育および訓練も含まれている。

 いったん緊急事態となり、新型コロナ患者が大量に入ってくるとなれば、命令一下、ミリタリー組織として動き出すのは当然である。看護部長の階級は、昔風に言えば大佐である。これは連隊長に匹敵する。

 また、医官(医師資格を持つ自衛官)も含めてCBRN防護に関する教育が、同病院の隣にある陸上自衛隊衛生学校でなされている。細目名で言えば、特殊武器衛生がこれにあたる。特殊武器というのは、自衛隊特有のCBRNを表す用語である。砲兵を特科、工兵を施設科と呼ぶのと同様である。

 なお、同病院は国内最多規模の感染者を受け入れ、3月19日には患者104人の症状に基づく分析結果を関係者全員の同意に基づき速やかに発表している。もちろん、病院関係者の2次感染は一切なかった。これはゾーニング(現場や後方地域を3段階に医療区分すること)、接触感染予防、飛沫感染予防などの徹底した感染予防策があったことは言うまでもない。

 また、第一種感染症指定医療機関としての感染患者受け入れ訓練や、首都直下型地震などを想定した大量傷者受け入れ訓練からのノウハウが、今回の事案対処において大きく活用されている。

 ちなみに、同病院に入院した外国人の患者に対しても細やかな配慮がなされていた。具体的には、患者と各国在京大使館との通訳支援や、本国間の連絡や母国語での情報収集を可能とするためのWi-Fiルーターの設置、病院食の工夫などが含まれている。入院していたドイツ人夫婦から、感謝の手紙が届いたというのも分かる気がする。
自衛隊中央病院の外観=東京都世田谷区(後藤徹二撮影)
自衛隊中央病院の外観=東京都世田谷区(後藤徹二撮影)
 ただ、自衛隊の対応とは対照的に、DP号でのオペレーションについて政府や行政が非難される場面がよく見受けられたが、なぜだろうか。DP号での自衛隊のオペレーションはどのように遂行されたのかについて、私の考えは以下の通りだ。
 
 まず、オペレーションを実行するにあたって次のキーワードが重要となる。

・作戦、情報、地域の見積

・状況判断の思考過程

・必ず達成すべき、達成が望ましい目標

・各行動の分析と比較

 これらは陸自の幹部なら必ず経験する戦術教育のキーワードである。もちろん、新型コロナ対応に当たっている医官や看護官、その他の薬剤官などの衛生科幹部も例外ではない。