田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

 5月25日、新型コロナウイルス感染拡大を受けた緊急事態宣言の全面解除が決まった。4月7日、首都圏など主要都市部を有する7都府県から始まった長い「闘い」に、一応の区切りがついた。

 今後、経済や社会は「コロナとの共存」に警戒しながら、徐々に回復の途を歩みだすだろうが、大きな不安があるのも事実だ。新型コロナの感染が再び急拡大する第2波の恐れ、そして経済の深刻な落ち込みである。

 緊急事態宣言が解除されたからといって、経済活動がフル回転できるわけではない。そもそも世界経済全体の落ち込みも回復していない。

 困難がしばらく続き、その不確実性の世界は不気味なほどの深さと広がりを持つ。この「コロナの時代」をどのように生きていくか、そこに経済対策の在り方もかかってくる。

 4月から約50日に及んだ緊急事態宣言によって、日本経済の落ち込みは、年率換算でマイナス20%を超える大幅な減速と予測されている。これは民間のエコノミストたちの平均的な予測ではあるものの、今年の1〜3月期についても、国内総生産(GDP)速報値と彼らの予測は大差なかった。

 しかも、この予測は第1次補正予算を含めたものであり、緊急事態宣言のゴールデンウィーク以降の継続だけでも相当の経済ショックを与えるだろう。緊急事態宣言延長とその後の経済減速を勘案すると、おそらく27兆円規模の需要支持が必要である。

 この数字は先ほどのエコノミストたちの平均予測から仮に算出したものだ。彼らの数字はあくまで年率換算であるため、GDP総額を530兆円とし、経済への衝撃がずっと同じレベルで続けば、年間で20%消失するというわけだ。したがって、4〜6月の第1四半期で見ると、4分の1の約27兆円の経済ダメージが生じる。

 さらに、感染期における経済対策なので、人々の経済活動が新型コロナ危機の前のように戻ることを想定するのは難しい。ソーシャルディスタンス(社会的距離)を引き続き採用し、自粛を継続することで、産業や業態ごとの活動率もバラバラになるだろう。

 要するに、緊急事態宣言のような経済の冷凍状態ではないが、「半冷凍」が続くと思われる。この中では、従来のような「真水」に注目するのは妥当な解釈とはいえない。

 従来の「真水」は、経済を刺激して、GDPを押し上げ、完全雇用を達成することに貢献する政府の財政支出を示している。例えば、新しい事業が増え、働く場が生まれ、経済が活性化することに貢献する財政支出の部分だ。
営業を再開した松屋銀座で、ソーシャルディスタンスを取って会計待ちをする来店客=2020年5月25日、東京都中央区(松井英幸撮影)
営業を再開した松屋銀座で、ソーシャルディスタンスを取って会計待ちをする来店客=2020年5月25日、東京都中央区(松井英幸撮影)
 だが、感染期の経済対策は、感染拡大を防ぐために経済をかなり抑制しなければならない。この状況は緊急事態宣言が解除されても、しばらくは続く。

 そのために「お客は来なくても倒産しない」「仕事がなくても失業しない」という状態を実現しなければならない。これはかなりの難度の高い政策である。