北京の特派員は、国営新華社通信の報道を確認したうえで原稿を送る。新華社通信は9日に習主席が「口信(メッセージ)」を送った事実を報じた。中国語で親書は「亲署函」と書く。北京特派員は新華社の記事を受けて、習主席が金委員長に「メッセージを送った」と書いたのである。

 ソウル特派員は「口頭親書」と書いたにもかかわらず、北京特派員は「メッセージ」としか書いていない。この差から、中国が親書と認めていないことがうかがえる。

 中国語の「口信」は親書というより、明らかにメッセージだ。それでも、朝鮮中央通信は「習近平主席の口頭親書が届いた」と報じたのである。

 中国が北朝鮮の要望に合わせるなら、口頭親書が来たので口頭親書の返事を出した、と報道すれば問題ない。わざわざ「メッセージ」と表現させたのには、何らかの意図があるのは当然だ。なぜ北朝鮮は「口頭親書」の表現にこだわり、中国は「親書」表現を拒否したのか。

 北朝鮮は5月1日に「健康な金正恩」を出現させた。そうなると、公務で姿を見せるなど頻繁な活動を誇示しなければおかしい。

 それをごまかすために「口頭親書」を送ったと報道し、健全な状態を演出しようとしたのではないか。この策略に、韓国メディアとソウル特派員がまんまと乗せられたといったら、言い過ぎだろうか。

 となると、朝鮮中央通信を裏読みすれば、金委員長の「必ずしも健全ではない」事実が浮き彫りになる。この視点から、習主席の「メッセージ」を読めば面白い。親書は、首脳に直接手渡されるから「親書」であって、習主席に誰も会っていないのに「口頭親書」とするのは、外交慣例上非礼にあたる。

 北朝鮮は、習主席の「口頭親書」返信を期待したはずだ。過去の北朝鮮のやり口からすれば、「口頭親書」を使うように要請したのは間違いない。それなのに、中国政府はメッセージを意味する「口信」を使った。
2020年5月1日、北朝鮮・順川で完工した肥料工場を見て回る金正恩朝鮮労働党委員長(朝鮮中央通信=共同)
2020年5月1日、北朝鮮・順川で完工した肥料工場を見て回る金正恩朝鮮労働党委員長(朝鮮中央通信=共同)
 北朝鮮のメンツは丸つぶれだが、中国側の不快感も強いことが分かる。中国は、北朝鮮が金委員長の「健全」を宣伝するために、習主席を利用したと受け止めたからだ。

 後で健全でなかったと分かったら、いい面の皮だ。失礼にもほどがある。