
2020年05月27日 12:11 公開
ミシェル・ロバーツ健康担当編集長(BBCニュース・オンライン)
イギリス政府は26日、新型コロナウイルスによる感染症COVID-19の治療薬として期待されていた抗ウイルス薬「レムデシビル」について、国民保健サービス(NHS)で特定の患者への提供を近く開始する方針だと明らかにした。
臨床試験では、レムデシビルの投与で患者の回復期間が短縮される効果がみられている。
レムデシビルの提供について、マット・ハンコック保健相は、おそらく新型ウイルスの感染危機が始まって以降で最大の1歩だと述べた。
十分な証拠あると当局
米製薬会社ギリアド・サイエンシズのレムデシビルは、エボラ出血熱の治療薬として開発されたもの。
英規制当局は、レムデシビルの効果について、入院中の特定のCOVID-19患者への使用を承認するのに十分な証拠があるとしている。
当面の間は、供給量に限りがあることから、レムデシビルの効果を最も得られる可能性のある患者に使用される。
レムデシビルの緊急使用をめぐっては、アメリカと日本がすでに特例で承認している。
現在、イギリスを含む世界の国々でレムデシビルの臨床試験が進められている。初期データは、薬の投与で患者の回復期間を約4日間短縮できると示している。一方で、より多くの人命を救うことにつながるとする証拠はない。
「素晴らしい進歩」
ギリアド・サイエンシズに、イギリスの患者の治療にあてるレムデシビルの在庫がどれくらいあるのかは不明。この点滴薬は、医師の助言に基づいて割り当てられることとなる。
保健省の政務次官(イノベーション担当)ジェイムズ・ベセル卿は、「これは素晴らしい進歩の表れだ。この前例のない時期を乗り切るうえで、常に患者の安全を確保することを最優先事項としつつ、我々は最新の医療の進歩の最前線にいなければならない」と述べた。
「最新の、専門家の科学的助言は、我々が下すあらゆる決断の中心となっている。イギリスの患者にとって最善の結果を確保するために、我々は国中で進められているレムデシビルの臨床試験での成果を引き続き注視していく」
リーズ大学メディカルスクールのスティーブン・グリフィン博士は、今のところ、レムデシビルが新型ウイルス治療においておそらく最も有望な抗ウイルス薬だと述べた。
グリフィン氏は、最も症状が重い患者に最初にレムデシビルが投与される可能性が高いだろうと述べた。
「最も倫理的に健全なアプローチであることが明白な一方で、レムデシビルが直ちに特効薬としての効果を表すという期待はすべきではないことも意味している」
「その代わりに、回復率の向上や患者の死亡率の減少は期待できる。これが、できるだけ多くの患者の利益になることを願っている」
抗マラリア薬は「安全性に懸念」
抗マラリア薬「ヒドロキシクロロキン」やHIV治療薬といったほかの複数の薬も、新型ウイルスの治療薬として研究されている。
世界保健機関(WHO)は25日、ヒドロキシクロロキンの臨床試験について、安全性への懸念を理由に「一時的に」中断したと発表した。
ヒドロキシクロロキンをめぐっては、患者の死亡リスクを高めるほか、心拍異常がみられたという研究結果が英医学誌ランセットに22日に掲載された。
イギリスでは、ヒドロキシクロロキンの人への投与を検討する臨床試験「リカバリー・トライアル」は今も進められている。しかし、治療よりも予防を目的とした、医療現場の最前線で働くNHSスタッフが対象の臨床試験では、さらなるボランティアの募集を一時停止している。
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