山田順(ジャーナリスト)

 どう考えても、「神国ニッポン」としか思えないことが現在進行中だ。もちろん、この先どうなるかは誰にも分からない。

 しかし、本稿執筆時点では、新型コロナウイルス感染症による日本の死亡者数は、世界の主要国、特に欧米諸国に比べて圧倒的に少ない。感染者数もまたしかりだ。

 緊急事態宣言は5月25日に全面解除された。しかも、日本の現状は、欧米諸国から見ると、異常というか、うらやましいというか、ミステリーというか、奇跡というか、どう解釈していいのか分からない。

 これに関しては、欧米メディアも本当に困惑していて、首をひねっているところが多い。米外交誌フォーリン・ポリシー(電子版)は5月14日、「日本の『生ぬるい』新型コロナ対応がうまくいっている不思議」という論評記事を掲載した。要旨は次のようだ。

 日本は中国に近く、中国からか観光客を大勢受け入れてきた。ソーシャルディスタンスも外出禁止も「要請ベース」と中途半端。「自粛疲れ」も起こっている。PCR検査数も国際水準を大きく下回り、5月14日までの実施件数はなんと米国の2・2%。
 共同通信が10日に実施した調査では、回答者の57・5%が新型コロナウイルスに関する政府の対応を「評価しない」と回答している。
 にもかかわらず、COVID−19が直接の原因で死亡した人の数は異常に低い。この結果は、敬服すべきものだが、単に幸運だったとも言える。ともかく、日本がなぜ諸外国のような感染危機にいたらなかったのかは大きな疑問だ。


 実は、私もこの件について、これまでずっと疑問に思ってきた。欧米の感染爆発の凄まじさを知るにつけ、「いずれ東京もニューヨークのようになる」という警告を長い間信じてきた。

 しかし、今日までそうはなっていない。5月28日時点の日本の確認感染者は1万6651人で、死亡者数は858人、人口100万人当たりの死亡者は6人。これに対して、米国は確認感染者169万9073人、死亡者10万411人、人口100万人当たりの死亡者は303人である。

 米国と日本の人口比は約3倍なのに、確認感染者数で約95倍、死亡者数では約110倍、人口100万人当たりの死亡者数で約45倍も差がある。となると、この数値をそのまま受け取れば、日本はコロナ対策の成功国と言うほかない。

参照:米ジョンズ・ホプキンズ大システム科学工学センター(CSSE)
参照:米ジョンズ・ホプキンズ大システム科学工学センター(CSSE)
 次の表は、世界の主な国をピックアップし、確認感染者数、死者数、人口100万人当たりの死者数を比較したものだが、これを見れば、欧米諸国と比べた日本の特殊性は際立つ。確認感染者数や死亡者数より、人口100万人当たりの死亡者数の方が「コロナ禍」の実際を表しているので、トップ5を見てみると、全て欧州の国になる。

 1位:ベルギー773人、2位:スペイン590人 、3位:イタリア525人、4位:英国508人、5位:フランス423人(米国は9位)で、日本は6人だから、ベルギーのなんと約130分の1となる。つまり、これほど「コロナ禍」を抑え込んでいることになる。

 5月14日、緊急事態宣言の一部解除の記者会見で、安倍晋三首相は次のように自画自賛した。

 中国からの第1波の流行を抑え込むことができた。欧米経由の第2波も抑え込みつつある。人口当たりの感染者数、死亡者数はG7、主要先進国の中でも圧倒的に少なく抑え込むことができている。これは数字上明らかな客観的事実だ。


 こう言われては、返す言葉がない。

 ある日突然、学校の一斉休校を言い出し、汚れている欠陥アベノマスクを配り、ミュージシャンと勝手にコラボして「自宅でくつろぐ姿」動画を流したりした。リーダーとして指導力を発揮できずに、何かといえば「専門家会議」「専門家のみなさま」と言い続けた。そして会見では、毎回プロンプターの原稿を読み上げるだけだ。
新型コロナウイルス感染症に伴う緊急事態宣言の全面解除を表明し会見で記者団の質問に答える安倍晋三首相=2020年5月25日(春名中撮影)
新型コロナウイルス感染症に伴う緊急事態宣言の全面解除を表明し会見で記者団の質問に答える安倍晋三首相=2020年5月25日(春名中撮影)
 そんな中、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議と厚生労働省は、国民がいくら「検査を増やせ」と言っても増やさず、「8割削減」だの「新しい生活様式」だのと対策をうやむやにしてきた。このように、どこからどう見ても、世界のどの国よりも遅れて劣るコロナ対策しかしてこなかったのに、結果は「吉」と出ているのだ。