ダイヤモンド・オンラインの『日本のコロナ死亡者が欧米より少ない理由、高齢者施設クラスターの実態』で、中央大の真野俊樹教授は、このことを指摘した上でこう述べている。

 日本は制度上、病院が病気のみならず、高齢者のケアも行うというスタイルを取っていた。一時期批判されたが、『社会的入院』のように、高齢者が長期入院して生活を病院の中で行うということもあった。(中略)
 海外に比べ、日本は病院以外の高齢者施設が少ない。世界一高齢者の比率が高い国でなぜこれが成り立っていたかというと、病院に高齢者が入院していたからである。すなわち、病院が高齢者施設の代わりをしているのは『日本の特殊性』ということになる。さらにいえば、急速な高齢化に伴い高齢者施設を増やしており、かつ日本の医療保険制度や介護保険制度を見習っている韓国でも同じように、病院が高齢者施設を代替している。ちなみに韓国も日本と同様、人口当たりの死亡者数が少ない。

 
 おそらく、これは一面の真実かもしれないが、死亡者数が少ない全ての理由ではないだろう。

 ウイルスは常に変異(ミューテーション)を遂げるものだという。新型コロナウイルスも同じだ。欧米の医学者らが運営する新型コロナウイルスのゲノムに関する専門サイト「ネクストトレイン」(nextrain)によると、ウイルスは15日間に一度のペースで変異を遂げているという。

 この変異を分類したのが、英ケンブリッジ大などの研究チームで、4月9日、医療研究者による国際データベース「GISAID」にその結果を公表した。それによると、新型コロナウイルスのリボ核酸(RNA)の塩基配列について変異パターンを比べると、ウイルスは3タイプに大別されたという。

 武漢を中心に中国で蔓延したAタイプと、Aから分かれて中国から東アジア諸国に広がったBタイプ、そしてBタイプから分かれて米国や欧州各国に広まったCタイプだ。つまり、日本で感染拡大せず、死亡者も少ないのは、欧米とはウイルスのタイプが違うからという説が、この研究から推測できる。

 日本の感染研も、4月28日に同じような研究結果を公表した。中国発のウイルスと米国・欧州のウイルスは変異の結果、違うタイプになっていたというのである。

 感染研では、国内外の患者5073人から収集した新型コロナウイルスのゲノム情報を解析した。それによると、1年間で25・9カ所に塩基変異が起きると推定され、それは単純計算すると平均14日間に一度のペースになる。

 こうしたことに基づいてウイルスを追跡すると、日本では、1月初旬に武漢で発生した「武漢株」を基点に各地で感染者が出た。しかし、これはその後消失へと転じた。

 その一方で、世界では欧米で感染爆発が起きたが、これは中国から伝播して変異した株だった。その後、この「欧米株」が日本にもやってきて、感染拡大を引き起こした。つまり、日本の感染拡大は「武漢株」が第1波で、「欧米株」が第2波というのだ。

 安倍首相が5月14日の記者会見で述べたのは、このことだったわけだが、ならば、欧州株による第2波が、なぜ、日本では欧米諸国のような感染爆発を起こさなかったのだろうか。この点は大いに疑問が残る。

 ただし、この欧州株が日本に上陸して、再変異していたとしたらどうだろうか。感染研では、2月に大量の感染者を出したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で確認された陽性患者のうち、70人の新型コロナウイルス・ゲノム情報を武漢株と比較したところ、1塩基のみ変異していたと発表している。

 そして、この株は乗員乗客以外から検出されていないという。とすれば、日本に上陸した「欧州株」は日本だけで変異して、欧州株より毒性が弱まったとはいえまいか。
新型コロナウイルスについて中国の専門家と共同記者会見するWHOのエイルワード氏=2020年2月、北京(共同)
新型コロナウイルスについて中国の専門家と共同記者会見するWHOのエイルワード氏=2020年2月、北京(共同)
 日本人は既に集団免疫を獲得している、という仮説も出ている。武漢で謎の肺炎が発生したのが昨年暮れのことだ。

 しかし、日本は全く無警戒で、昨年12月には71万人、今年1月には92万人もの中国人を受け入れている。武漢が封鎖され、ダイヤモンド・プリンセスが寄港した2月になっても、入国を規制しなかったため、10万人を超える中国人が来日した。

 つまり、この3カ月間で、多くの日本人が「武漢株」に感染し、ほとんど無症状のまま免疫を獲得したというのである。