ゲイと薬物との親和性については昔から問題視されてきた。ゲイナイトでプレイするDJやドラァグクイーン(男性が女性の姿で行うパフォーマンス)、ゲイバーのママが逮捕された話は事欠かない。覚せい剤取締法違反(所持)容疑などで2度目の逮捕、起訴となったミュージシャンの槇原敬之被告の秘匿捜査を進めていたのも新宿2丁目を管轄する警視庁四谷署だ。

 ハッテン場周辺の見回りは性的指向への偏見によるものではなく、性行為での興奮をより高める目的で違法薬物を使用するゲイが減らないからである。こうした情報は新宿2丁目をフィールドワークした経験のある人なら誰もが承知していることであり、警察は決して「性的少数者いじめ」をしているわけではないのだ。

 だがこれは、リベラル政党やLGBT活動家にとっては「不都合な真実」に他ならない。近年ようやくLGBTの権利が注目されるようになってきたのに、ゲイの負の部分が国民に見えてしまうとムーブメントに水を差すことになる。だから、警察を攻撃することで、人々の目が真実に向かないようにしているのだと感じる。

 かつて筆者も新宿3丁目の日焼けサロンで似たような出来事に遭遇したことがある。巡回に来た警察官が非常口に積んであったゲイナイトのフライヤーの入った段ボール箱を見て「もしものときに邪魔になるといけないので場所を移動してもらえますか」と店側にお願いしたところ、身の置き所のなくなった店員がいきなり「ゲイ差別だ」と騒ぎ始めたのだ。

 「差別」だと名指しすれば相手は強張り怯(ひる)む。ゲイの一部に「差別」という言葉を理不尽な要求を押し通すためのキラーワードとして使っている側面があることは残念ながら否定できない。石川氏を擁護したLGBT活動家もしかり。火消しのための「葵の御紋」として利用したと言われても仕方がない。

 無論、世の中から差別がなくなったわけではない。筆者も地元の国会議員に「同性愛者のあなたは秋田の代表としてふさわしくない。選挙の候補者を降りるべきだ」との旨を真顔で言われたときには一人枕を濡らした。それゆえに差別解消に向けて尽力したい気持ちは人並み以上だ。でも、だからこそ、はき違えた正義についてはLGBT当事者自身が声を上げていかなくてはならないと思う。

 また、こんなこともあった。「8割おじさん」こと厚生労働省クラスター対策班の西浦博北海道大教授がインタビューで、新型コロナウイルス感染拡大の事例として「性的に男性同士の接触がある人も多い」と説明した。

 すると突然、過激なLGBT活動家から「同性愛差別だ」と難癖をつけられたのだ。小池百合子東京都知事が「三密」を避けるよう緊急会見した3月25日以降もハッテン場は営業を続けていた。エロ系のゲイ・クラブイベントも中止されることなく強引に開かれていた。西浦氏が警鐘を鳴らしたのは当然のことだった。
新型コロナウイルスのクラスター感染防止策について、記者会見する北海道大の西浦博教授(中央)=2020年4月、厚労省
新型コロナウイルスのクラスター感染防止策について、記者会見する北海道大の西浦博教授(中央)=2020年4月、厚労省
 しかしながら「差別」という言葉にあおられた人々は反射的に西浦氏を断罪した。結局西浦氏は、早期に事態を収拾させるために謝罪せざるを得なかった。この理不尽な糾弾劇を見て怒ったのは一般のゲイたちだった。「西浦氏は謝る必要はない」「われわれには自浄作用がない。LGBT団体も見て見ぬふりをし、ハッテン行為を自粛しろとは言わない。西浦先生に言わせてしまって申し訳ない」と、LGBT運動の問題点を冷静に分析するコメントで溢れた。

 このエピソードからも分かるように、LGBT活動家と「普通」に暮らすLGBT当事者との感覚のズレは近頃ますます大きくなっている。韓国での例だが、ゲイが集うクラブで感染爆発が起き、身元を明かされることを恐れた約3千人と連絡が取れないとの情報もあり、そうなる前に啓発した西浦氏の行動には意味があったと言えよう。