2020年05月28日 17:00 公開

マイク・ヒルズ、ビジュアル・ジャーナリスト

アメリカで新型コロナウイルスの感染者が初めて確認された2日後、ドナルド・トランプ米大統領は事態は「完全にコントロール」できているし、「まったく大丈夫だ」と国民に念押しした。

あれから4カ月。ウイルスは全50州に拡大し、160万人以上の感染が確認され、10万人以上が死亡した。

アメリカでのこの数字が諸外国と比べてどうなのか、そして今後数カ月の展開はどうなるかもしれないのかを検討する。

アメリカの状況を他国と比べると

アメリカの死者数は4月初めに世界最多になり、その後も劇的に増え続けた。

トランプ大統領は当初、アメリカでの死者は「5万人から6万人」になるだろうと話していたが、5月には10万人を超えないことを期待すると述べていた。しかし、その「10万人」という数字をアメリカは突破してしまった。今なお毎日平均して約1000人が亡くなっている。

死者に注目するよりも、トランプ氏は死亡率をよく引き合いに出す。死亡率とは、その国の人口を分母にした死者数の割合だ。トランプ氏はこれを取り上げ、アメリカの対応は一部の国よりも効果的だという証拠だと主張する。

下の表は、特に死者が多い国の総死者数と10万人あたりの死者数を比較している。これで見ると、人口あたりの死者の割合がアメリカより大きい国がいくつかあるのが分かる。米ジョンズ・ホプキンス大学によると人口10万人当たりの死者数では、アメリカは世界9位。ベルギー、スペイン、イギリス、イタリア、フランス、スウェーデン、オランダ、アイルランドが、アメリカより多い。


人口約1150万人のベルギーでは人口10万人あたり80人が亡くなっている。これに対して、人口約3億3000万人のアメリカでは、10万人あたり30人近くが亡くなっている。

しかし、アメリカで最も被害甚大だったニューヨーク州を見ると、10万人あたり150人近くが死亡している。アメリカ国内ではかなりの地域差がある。

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新型コロナウイルスによる死者の数え方は国によって異なる。これが、感染状況の国別比較を難しくしている理由のひとつだ。たとえばベルギーでは、新型コロナウイルス感染を検査で確認していないものの関連が疑われる死者は、統計に加えている。アメリカではベルギーと同じように、未確認の疑わしいケースも含める州もあれば、そうしない州もある。

加えて国によっては、政府の公式データの信用性も問題になる。特に中国政府に批判的な人たちは、中国がアウトブレイク(大流行)の発生以来、感染規模を一貫して少なく公表してきたと批判する。

アウトブレイクのどの段階にあるのかは国によって異なる。それも、比較を難しくしている。欧州では多くの国が明らかに、日別の新規感染者数が大幅に減少中で、感染のピークを過ぎた段階にある。しかし、アメリカもそうだとは現時点では言えない。

ニューヨークはピークを過ぎた しかしアメリカは?

欧州の中には、アメリカとほぼ同時期にアウトブレイクが発生した国もある。いずれも死者が急増し、ピークに達し、減少し始めた。しかし、アメリカではそうなっていない。

アメリカでは日別の死者数が大幅に減るというより、一定数で平らになってしまっている。アメリカという国の大きさがこれには関係している。ひとつの大規模なアウトブレイクではなく、アメリカでは複数の時期に複数の場所で、複数の速度で、アウトブレイクが進行したからだ。

ニューヨーク州では早い段階でアウトブレイクが始まり、急激に拡大し、4月上旬にピークに達した。しかし、ニューヨーク以外のアメリカ国内では、1日の死者数が急減しているとは言いがたい。


早い段階で大きな被害が出たルイジアナ州やミシガン州などでも、ニューヨーク州と同様に1日の死者数はかなり減少している。

しかし、事態が改善した州もあれば、悪化した州もある。

先週について言えば、前の州より死者が増えた州は約3割で、ロードアイランド、ミシシッピー、オハイオ各州では特に大きく増えている

アメリカの検査、現時点では最多

トランプ大統領はこのところ、アメリカ国内で実施されるウイルス検査の数を強調している。直近のデータによると、アメリカ国内ではこれまでに1500万件の検査が実施された。

その数は諸外国よりはるかに多い。しかし、感染対策としての検査となると、ただたくさん実施すれば良いというわけにもいかない。


新型ウイルスのパンデミック(世界的流行)初期に検査を多数行い、感染者に接触した人を追跡調査した国々が、感染スピードの抑制という意味で最も成功している。

たとえば韓国では、早い段階で検査体制を強化し、ウイルスの封じ込めに成功した。人口約5000万人に対して、死者は300人未満だ。

一方でアメリカの場合、最初の死者が確認されてから、保健当局が検査体制を本格化するまでには、数週間の間があった。


米政府の感染症対策を主導した米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ博士は3月、連邦議会下院公聴会で「現時点で検査体制はうまくいっていない」と証言した。「ほかの国の人たちができているのに」アメリカでは「簡単に」検査を提供することができずにいると、ファウチ氏は警鐘を鳴らしていた。

ではアメリカは今後どうなる

死者数は、増加のペースは落ちているものの、増え続けている。ホワイトハウスが引用した米ワシントン大学の予測モデルでは、8月までに死者数は15万人近くになるかもしれないと想定している。ただし、実際の数字は同大学の予測をかなり上回りがちだという指摘もある

未来予想は容易ではない。ひとつに、米経済を徐々に再開すれば感染拡大にどう影響するか、誰もはっきりとは分からないからだ。

かつては米人口の9割以上がロックダウンの命令を受けていた。しかし今では大半の州が、自宅待機の行動制限を緩和しつつある。

ホワイトハウスは、規制緩和開始に必要な要件を各州に示している。要件には、新規感染者が2週間継続して減り続けることという内容もある。しかし、公衆衛生の専門家グループは、その要件を満たしている州は一握りだけだと指摘している。

ファウチ博士は、ウイルスが十分に封じ込められていないうちから各州が経済活動を再開すれば、「小規模な急増がやがてアウトブレイクになる」と警告する。

ファウチ氏のこの警告は、トランプ大統領の主張の逆を行くものだった。トランプ氏は再選を目指す秋の大統領選本選に向けた活動が本格化する前に、米経済を再開させようとしている。米労働省が21日に発表した最新の米雇用統計によると、新型ウイルスのアウトブレイクが始まって以来、アメリカの労働者の約25%が失職したという。

規制を解除することで人命が失われるのではないかと今月初めに質問されたトランプ氏は、「ひどい影響を受ける人がいるか? それはいる。それでも国を再開しなくてはならない。しかもすぐに」と答えていた。

とはいえ、各州が引き続き規制緩和を続けたとしても、住民がただちに小売店や飲食店に戻りたがるかは不透明だ。米調査機関ピュー研究所による最近の調査では、州が再開を急ぎすぎるのではないかと心配しているアメリカ人は、7割に上っていた。


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(英語記事 Coronavirus: How the pandemic in US compares to rest of world