2020年05月29日 12:12 公開

中国は28日、反体制活動を禁じる「香港国家安全法」の制定方針を全国人民代表大会(全人代=国会に相当)で採択した。これに対し、アメリカやイギリス、オーストラリア、カナダは同日、「自由の砦(とりで)として繁栄してきた」香港の自由を脅かすことになると非難する共同声明を発表した。

アメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダの4カ国は、国際社会には香港の繁栄と安定における「重要かつ長年の利害関係」があるとしている。

また、新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)の最中の採択は、各国政府や国際協力に対する信頼を損なう危険性があると主張した。

中国側はこうした国外からの批判を一蹴している。

28日に採択された国家安全法をめぐっては、すでに香港で新たな反政府抗議デモが起きている。

共同声明の内容

アメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダは、国家安全法を香港の司法制度を介さずに中国政府が直接導入することで「香港人の自由を狭め」、「香港の自治や、香港をこれほどまでに繁栄させた仕組みを劇的に損なう」ことになると主張している。

香港はかつて、150年以上にわたってイギリスの植民地だった。

イギリスと中国は1984年に、「一国二制度」の下に香港が1997年に中国に返還されることで合意した。香港は中国の一部になるものの、返還から50年は「外交と国防問題以外では高い自治を維持する」ことになった。

国家安全法の導入は、この時に両国が署名した中英連合声明で定められた中国の国際的義務に抵触するほか、「一国二制度」の原則を損ない、「香港で政治犯罪で起訴される可能性を高める」ことになると、4カ国は声明に書いた。

さらに、中国大陸との関係をめぐり抗議デモや衝突が繰り返し発生している香港で、国家安全法によって分断がさらに深まることを「深く懸念している」としている。

「香港の人々が約束された権利と自由を享受できるようにし、香港社会全体からの信頼を回復することが、昨年1年間にわたって続いた緊張や社会不安を改善する唯一の方法だろう」

4カ国は中国に対し、香港政府と香港の人々と連携して「お互いが受け入れられる和解点」をみつけるよう求めている。

イギリスは市民権の付与に言及

イギリスは28日、中国が国家安全法を一時停止しない場合、香港の約30万人の英国海外市民旅券(英国が植民地時代に発行)保有者に対し、「将来的な英国市民権を獲得する手段」を与える可能性があるとした。

日本の外務省は28日、香港は同国にとって「緊密な経済関係及び人的交流を有する極めて重要なパートナーであり、一国二制度の下に、従来の自由で開かれた体制が維持され、民主的、安定的に発展していくことが重要」だとの立場を示した。

アメリカのマイク・ポンペオ国務長官は27日、香港は「高度な自治」を維持できておらず、アメリカが認めてきた貿易や投資における優遇特権の継続にもはや値しないと議会に報告した。

この優遇特権が取り消されれば、香港は今後アメリカから、貿易やそのほかの目的において中国と同じ扱いを受ける可能性がある。そうなれば、貿易の中心としての香港の地位に大きな影響を与える恐れがある。

国家安全法とは

国家安全法とは反逆や扇動、破壊行為などを禁止することを目的としたもので、中国が独自の治安機関を香港に設置できるとの規定も盛り込まれている。

具体的にどのような行為が禁止されるのかは明らかになってはいない。詳細は数週間内に策定され、9月までに成立する見通し。

次の4つが犯罪行為とみなされるとみられる。

  • 分離独立行為― 中国からの離脱
  • 反政府行為― 中央政府の権力あるいは権威の弱体化
  • テロ行為― 人への暴力や脅迫
  • 香港に干渉する国外勢力による活動

専門家は、中国大陸で起きているように、中国政府を批判した人が罰せられることになるのではないかと懸念しているという。

中国外務省の駐香港特派員公署は、香港が自治を失ったとするポンペオ米国務長官の主張について、「断固として反対、反論した」と述べ、中国の内政「干渉を直ちにやめる」よう求めた。また、国家安全法をめぐるアメリカの批判は「完全に横柄で不合理で、厚かましい」ものだと述べた。

香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は25日、国家安全法が香港市民の権利を制限することはないとし、法に従っている大半の市民を守るための「責任ある」取り組みだと擁護した。

(英語記事 US and allies defend HK as 'bastion of freedom'