2020年05月29日 13:31 公開

米ミネソタ州ミネアポリスで、黒人男性が警察に拘束された際に死亡したことに抗議する運動が28日、2日目を迎え、州兵が派遣される事態になった。

ミネアポリスでは25日、レストラン警備員としての勤務歴があったジョージ・フロイドさん(46)が警察に拘束された際、首を膝で押さえ付けられた。

フロイドさんがうめき声を上げ、「息ができない」と白人警官に繰り返し訴える様子が動画に撮影されていた。フロイドさんはその後、死亡した。

27日の抗議では、店舗での略奪なども発生したために警察が催涙ガスを使用した。

28日にはさらに多くの抗議運動が計画されている。また、イリノイ州シカゴ、カリフォルニア州ロサンゼルス、テネシー州メンフィスなどでも抗議が起こった。

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ミネソタ州のティム・ウォルツ知事は28日、ミネアポリスのジェイコブ・フレイ市長などの要請を受けて、「平和時緊急事態」を宣言。州兵の派遣を認めた。

ウォルツ知事は、抗議活動の最中に行われた強奪や破壊行為、放火が、ミネアポリスで多くの店舗にダメージを与えたと説明した。これらの店舗には、人種的マイノリティーが所有する店もあったという。

その上で、「ジョージ・フロイドさんの死は正義とシステムの変化につながらなければならない。さらなる死や破壊につなげてはいけない」と、平和的な抗議を呼びかけた。

ミネアポリスのフレイ市長はこの日、フロイド氏を押さえつけていた警官を刑事訴追すべきだと述べた。フロイドさんの拘束に関わっていた4人の警官はすでに懲戒免職となっている。

アメリカでは警察による黒人市民の殺害行為が相次いでおり、大きな怒りを呼んでいる。先にはケンタッキー州で、ブレオナ・テイラーさん(26)が捜査する住所を間違えた警察によって射殺された。

また、今回の事件は2014年にニューヨーク市で警察に逮捕される際に死亡した黒人男性エリック・ガーナーさん(43)の事件と重なる部分が多い。ガーナーさんの死は「黒人の命は大切(Black Lives Matter)」運動の原動力となった。

警察に対する抗議活動は26日午後から始まり、数百人が事件のあった交差点に集まった。

デモの主催者は、デモを平和的なものに保ち、新型コロナウイルス対策の社会的距離を維持するよう努めた。デモ隊は「息ができない」、「被害に遭っていたのは自分だったかもしれない」と声を上げた。

翌27日には、抗議参加者は数千人に膨れ上がった。警官に石を投げつけたり、催涙ガス缶を投げ返したりする参加者もあった。

警察署の前では、抗議者を中に入れないように警官が人の壁を作り、こう着状態になる場面もあった。

「正義が必要だ」

フロイドさんの兄弟のフィロニス・フロイドさんはCNNの取材で、この警官らが死刑になることを望むと話した。

「もう兄弟を取り戻すことはできない。正義が必要だ」とフィロニスさんは話した。

また、自分の兄弟を「白昼に処刑した」警官らは逮捕されるべきだと述べ、「黒人男性が死ぬのを見るのはうんざりだ」と語った。

一方で、抗議参加者が怒りをあらわにしているのも理解できると述べた。

「私と同じ痛みを感じている人たちを止めることはできない」

ミネアポリス警察トップののメダリア・アラドンド氏は、フロイド氏の死が与えた「痛みや絶望、トラウマ」について謝罪。警察がミネアポリスの「希望のなさ」を助長していたと話した。

国連のミシェル・バチェレ人権高等弁務官もこの問題を非難し、「強固で広く普及した人種差別」を認識し、対処すべきだと指摘した。

また、抗議参加者に平和な活動を呼びかけるとともに、警察には「現状を悪化させないよう細心の注意を払う」よう訴えた。

ドナルド・トランプ大統領の報道官は28日、大統領はフロイドさんの動画を見て「非常に動揺していた」と述べた。

このほか、俳優のジョン・ボイエガさん、レブロン・ジェイムズさん、歌手のビヨンセ、ジャスティン・ビーバーさんといった著名人も、次々に怒りを表明した。

フロイドさんに何があったのか

警察の声明によると、偽の20ドル札を使おうとした客がいると商店から通報があった。

警察によると、警官たちは自動車内にいたフロイドさんを発見。車から離れるよう命令すると、フロイドさんは抵抗した後、手錠をかけられた。その後、フロイドさんの「体調に異常」が見られることに気づいたという。

現場で撮影された動画からは、フロイドさんと警察のやりとりがどうやって始まったのかは映っていない。しかし、白人警官1人に膝で首を押さえ付けられたフロイドさんが「息ができない」、「殺さないで」と言っているのが確認できる。

ミネアポリス当局によると、フロイドさん拘束に関わった元警察官はデレク・ショーヴァン氏、トウ・サオ氏、トーマス・レイン氏、J・アレクサンダー・クング氏の4人。

地元メディアは、フロイドさんの首を押さえつけていたのはショーヴァン氏だと報じている。

ミネアポリス警察官協会は、4人は捜査に協力していると述べている。地元メディアに掲載した声明で同協会は、「今は判断を急ぐ時ではない」と述べた。

「すべての動画を検討し、検視官の報告書を待たなくてはならない」


「こうやって耳を傾けている」 ――ジェシカ・ラッセンホップ、BBCシニアスタッフライター(ミネアポリス)

暴力的で破壊活動の続いた夜の翌朝、まだ燃えている建物の煙でミネアポリスの空気は重かった。

あらゆる壁や標識に新しい落書きがほどこされている。バス停の待合スペースは、ガラスが割られて骨組みだけになっていた。

ミネアポリスの繁華街の一角が、紛争地帯のような雰囲気になっている。

もっとも被害が大きかったのは、フロイドさんの死に関与した警察官が働いていたとみられるミネアポリス警察の第3管区だ。

この日の朝も少なくとも100人の抗議者が集まり、管区の駐車場入り口を守る警官に向かって叫んでいる。警官はヘルメットをかぶって沈黙を守っている。屋上からは、武装した警官が監視している。

盗難にあった「ターゲット」の駐車場には、店舗から出されたがれきなどが積みあがっている。ガラスの割れたドアやウィンドウからはなおも、興味にそそられた人々が出入りしている。その荒廃ぶりに、誰もがそわそわと興奮しているようだった。

破壊は無差別だった。銀行から小切手換金店、リカーショップなどが標的となったほか、公立図書館では窓が割られ、本棚や書見台にガラスが散乱した。ターゲットと同じショッピングモール内にあるチャータースクールの教室は、非常警報が鳴らされたせいか、床が水浸しになっていた。

市内にまん延した市民の怒りは明らかだった。叫び声や嗚咽(おえつ)がずっと聞こえていた。この抗議行動が数週間とは言わないまでもあと数日は続くこと、さらなる暴動が見込まれることは分かりきった結論のようだ。ある参加者は私に、「悲しいことだけど、こうやって耳を傾けているんだ」と言った


(英語記事 National Guard deployed after Minneapolis clashes