2020年05月30日 14:30 公開

アメリカのドナルド・トランプ大統領は29日、中国が反体制活動を禁じる「香港国家安全法」の導入を決めたことを受け、香港に認めてきた貿易や渡航における優遇措置を停止する方針を発表した。

トランプ大統領は、香港に「国家安全法」を導入しようとする中国政府の動きを「悲劇」だと述べた。

中国は西側諸国に対し、香港への「干渉をやめる」よう求めている。

かつてイギリスの植民地だった香港は、言論の自由や表現の自由など、中国大陸ではみられないような権利を享受している。これは、「一国二制度」の下に香港を中国に返還するという、1984年のイギリスと中国との合意に基づくもの。

しかし、国家安全法が、この合意で定められた香港の特別な地位に終止符を打つことになると考える人は多い。また、香港で中国政府の権威を弱体化させる行為が犯罪とみなされるのではと不安視されている。

香港では国家安全法の導入をめぐり、反政府デモが勃発している。

香港の優遇措置を停止、当局者への対抗措置も

トランプ氏は、もはや香港が中国から切り離されているとは考えていないと述べた。

「中国は一国二制度を一国一制度に置き換えた」と、トランプ氏はホワイトハウスのローズガーデンで記者団に述べた。

「これは香港にとって悲劇だ。(中略)中国が香港の自由を抑え込んでいる」

トランプ氏は、香港の自治を損なう動きに関与すると米政府がみなす中国と香港の当局者、対抗措置を講じる方針だと述べた。どのようなかたちで制裁を科すのかは明らかにしなかった。

さらに、中国からの「監視の危険性が高まっている」ことを踏まえ、米国務省が香港への渡航情報を見直すことになると付け加えた。

トランプ氏はまた、アメリカが安全保障上のリスクがあるかもしれないと判断した中国からの外国人の入国を一時停止する方針だと述べた。数千人もの大学院生に影響がおよぶ可能性がある。

中国の指導者らの意見を反映しているとみられる中国紙・環球時報(グローバルタイムス)は、アメリカが香港の特別な地位を廃止しようとしていることについて、「無謀で恣意的」だと伝えた。

香港の鄭若驊(テレサ・チェン)法務長官は29日、BBC中国語サービスに対し、いかなる制裁による脅しも容認しないと述べた。

「他国に方針を変更することを強要するために制裁を科すというのか? そのような制裁は誰の利益にもならない」

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国家安全法とは

中国が28日の全国人民代表大会(全人代=国会に相当)で採択した国家安全法とは反逆や扇動、破壊行為などを禁止することを目的としたもので、中国が独自の治安機関を香港に設置できるとの規定も盛り込まれている。

具体的にどのような行為が禁止されるのかは明らかになってはいない。詳細は数週間内に策定され、9月までに成立する見通し。

次の4つが犯罪行為とみなされるとみられる。

  • 分離独立行為― 中国からの離脱
  • 反政府行為― 中央政府の権力あるいは権威の弱体化
  • テロ行為― 人への暴力や脅迫
  • 香港に干渉する国外勢力による活動

専門家は、中国大陸で起きているように、中国政府を批判した人が罰せられることになるのではないかと懸念しているという。

中国外務省の駐香港特派員公署は、国家安全法をめぐるアメリカの批判は「完全に横柄で不合理で、厚かましい」ものだと述べた。

香港人に英市民権付与の可能性も

イギリスのドミニク・ラーブ外相は28日、中国がこの法の導入を停止しない場合、英国海外市民旅券(BNO)を保有する香港人に対し、英市民権を獲得する道を開く可能性があると述べた。

BNOとは、香港がイギリスの植民地だった時代に香港人に対して発行されたもので、イギリス人が保有する旅券とは異なる。

BNO保有者は、イギリスにビザなしで最長6カ月間滞在できる。この滞在期間を延長可能にすることで、将来的な市民権獲得につながるとしている。

英内務省は29日、BNOを保有する最大30万人の香港人について、自ら申請し旅券を付与されていれば、この方法で市民権を獲得できる可能性があると認めた。

(英語記事 Trump targets China over Hong Kong security law