2020年05月30日 14:43 公開

米ツイッター社は29日、初めてトランプ氏によるツイートの上に警告をかぶせ、クリックしないと表示されないようにした。暴力を賛美する内容を禁止する利用規定に違反したからだと言う。同じツイートのコピーを後にホワイトハウス公式アカウントがツイートした際も、同社は同様に対応した。

どちらのツイートも削除されたり非表示にされたりしたわけではなく、表示されている警告文をクリックすると、内容を見ることができる。ただし、他の利用者はこのツイートに返信もリツイートもできないし、「いいね」を押すこともできない。ただし、コメントをつけてツイートすることはできる。

内容が見られるようにしてあることについてツイッター社は、「このツイートを閲覧可能にしておくことは公共の利益につながるかもしれないと、ツイッターは判断した」とツイートしている。

対象となったトランプ氏のツイートは、白人警官に膝で首を押さえつけられた黒人男性が死亡した事件を受けて米ミネソタ州ミネアポリスで抗議デモや暴動が相次いでいることについてのもの。

トランプ氏は略奪者を「ごろつき」と呼び、「州兵を送り込む」と書き、さらに「略奪が始まれば、発砲が始まる」と警告した。

この2つ目のツイートについて、ツイッター社は「暴力を賛美する」内容だと判断して警告した。

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ツイッター社は公式アカウントから、説明を連投。「このツイートは、最後の文の歴史的文脈、暴力との関係、今も同じような行動のきっかけになりかねないというリスクをもとに、暴力をたたえる投稿に対する規定に違反した」と説明した。

ツイッターが言う「歴史的文脈」とは、「略奪が始まれば、発砲が始まる」という表現が、1960年代の公民権運動に関連したものだという背景に言及したものとされている。

この表現は、1967年12月にフロリダ州マイアミ市警のウォルター・ヘッドリー本部長がアフリカ系市民を厳しく取り締まる際に使用したもの。ヘッドリー本部長は当時、公民権運動のデモをくいとめるため、黒人地区で警官が銃や警察犬をことさらに誇示することを奨励していた。この表現はその強硬策の一部だった。

当時のマイアミ市内の情勢緊迫に、この強硬策が関係したという報告もある。1968年8月に大統領選に向けた共和党大会がマイアミで開かれた最中に、公民権活動家たちが開いた抗議集会が暴動に発展し、3人が死亡した。

ツイッター社は、「(このツイートが)他の人による暴力的行動のきっかけにならないよう対応したが、ツイートはツイッター上に残してある。世間にとって大事な進行中のできごとに関わる内容なので、世間がこの内容を引き続き見ることができるのは大事なことなので」と説明している。

トランプ氏の同じ内容の投稿は、フェイスブックでは警告も何もない状態で表示されている

トランプ氏は29日、自分の書いた内容が誤解されたと釈明した。

「略奪が起きれば発砲が起きる。だから水曜夜にミネアポリスで男性が撃たれて死んだんだ。それか、7人が撃たれたルイヴィルでついさっき起きたことを見るといい」、トランプ氏は書いた。

ケンタッキー州ルイヴィルでは28日夜、3月に警察に撃たれて死亡した救命スタッフ、ブリオナ・テイラーさんの事件に対する抗議で、7人が撃たれた。

「こんなことになってほしくない。夕べの表現はそういう意味だ」と、トランプ氏は書いた。

ツイッターが警告文を表示してから数時間後、トランプ氏は「ツイッターは中国や極左民主党が繰り出すうそやプロパガンダについて、何もしない。ツイッターは共和党と保守派と合衆国大統領をターゲットにした」と反発。利用者の投稿内容についてインターネット・プロバイダーの責任を免責する「米通信品位法230条」の撤回を、連邦議会に呼びかけ、「それまでは規制する!」と強調した。

https://twitter.com/realDonaldTrump/status/1266326065833824257


これに先立ちツイッター社は、トランプ氏の別の投稿について「要事実確認」の警告ラベルをつけていた。それに対抗する形でトランプ氏は、第203条による免責を取り上げようと、大統領令に署名した

ツイッター社は以前にも、他国の政府首脳によるツイートを削除したり、アカウントを凍結したりしている。

2019年2月には、イランの最高指導者アリ・ハメネイ師が英作家サルマン・ラシュディー氏を脅迫したとみられるツイートを削除した。

さらに昨年、キューバのラウル・カストロ大統領や政府関係者のアカウントを、規定違反を理由に一時凍結した。

ツイッター社は、世界的に注目される人によるルール違反ツイートは、削除するよりも警告をつけるという方針を昨年半ばに発表した。しかし同社はこれまで、トランプ氏のツイートには適用してこなかった。トランプ氏のツイートを削除したこともない。

英シンクタンク「デモス」でソーシャルメディア分析を担当するカール・ミラー氏は、「ツイッターや、その他の巨大ソーシャルメディアが、これほど勇敢で大胆なことをするのは、初めてだ」と話す。

「オンラインの加害行動と言論の自由をめぐる議論に、ロケット燃料を注ぐような出来事だ。オンライン言論に対する規制として、これほど議論を呼ぶものはない」


<解説> ローリー・ケスラン=ジョーンズ、BBCテクノロジー担当編集委員

ツイッターはもう何年も、ドナルド・トランプを他の利用者と同じように扱い、ルールに従わせろという声に抵抗してきた。

それが27日になって、まずは最初の一手を振り出した。ツイートを削除するわけではないが、実際の事実を確認させるためのリンクを追加したのだ。

反撃する大統領に対して、ツイッターとしては2つの選択肢があった。このままじっとして嵐が過ぎ去るのを待つのか、それともルールに沿って対応し続けるのか。ツイッターが選んだのは後者で、暴力を賛美したと大統領を指差したのだ。

これがほかのユーザーなら、ツイートは削除されただろうし、アカウントも凍結されたかもしれない。

トランプ氏にとってもツイッターにとっても、簡単な解決策はなさそうだ。言論の自由の限度とは、そしてソーシャルメディアが投稿内容に介入する権利とは。こうしたことについて、大きな戦いが始まろうとしている。

今のところ、どちらも一歩も譲りそうにない。ホワイトハウスはツイッターを検索しまくって、暴力を賛美してもおとがめなしだった他の政府指導者のツイートを躍起になって探している。他方で、トランプ氏の過去の様々な違反ツイートを次々に発掘している人たちもいる。たとえば、新型コロナウイルスの治療法について誤情報を拡散したツイートなどだ。

ツイッター社のジャック・ドーシー創業者兼最高経営責任者(CEO)はこれまで、投稿内容を規制をするにしても極力軽い規制しかしたくないという様子だった。それが今では、世界中の政府首脳を取り締まらなくてはならない、面倒な事態に直面している。

(英語記事 Twitter hides Trump tweet for 'glorifying violence'