2020年06月01日 12:29 公開

アメリカでジョージ・フロイドさん(46)の死亡をきっかけに各地で発生した騒乱は31日も続き、フロイドさんの遺族側弁護士は警察官による「計画的殺人」だと非難した。

ミネソタ州ミネアポリスの警察官だったデレック・チョーヴィン被告(44)は第3級殺人罪で起訴されている。

しかし、遺族の弁護士ベンジャミン・クランプ氏は米CBSニュースに、第1級殺人罪が相当だと述べた。

「殺意があったと考えている(中略)9分近く、息ができない、息をさせてくれと懇願する男性の首を膝で押さえ続けたのだから」

クランプ弁護士は、「フロイドさんが意識を失った後も3分近く、チョーヴィン警官は彼の首を膝で押さえていた。それがなぜ第1級殺人ではないのか。なぜ関わった警官全員が逮捕されないのか」と述べた。

事件に関与した他の警官3人も懲戒免職となっている。

クランプ弁護士はCBSのインタビューで、「警官が身に着けていたカメラの音声があり、警官の1人が『脈がない、横向きにしたほうがいいかもしれない』と言ったが、チョーヴィン警官は『いや、このままにしておく』と答えていた。これは故意だ」と述べた。

クランプ氏はまた、チョーヴィン被告とフロイドさんは今回の事件の前から互いに面識があったと話した。

フロイドさんの家族は、「フロイドさんが警備員だったクラブの所有者から、デレック・チョーヴィンも勤務時間外に警備に当たっていたと聞いており、2人は重なっていたことになる」と、クランプ氏は述べた。

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「法と秩序を」と大統領

今回の事件を受けて全米各地で発生した抗議デモは一部で暴力沙汰に発展し、フィラデルフィアでは略奪が起きたと報じられている。

同市の2つのテレビ局が31日に放送した映像では、若者が警察車両を破壊し、少なくとも1カ所の商店から略奪している。

チャック・マクデイド記者は、「フィラデルフィアで略奪が続いている」とツイート。大勢がドラッグストアや衣料品店になだれ込んでいる様子を撮影した、ヘリコプターからの映像を投稿した。

https://twitter.com/Squared6abc/status/1267192319406735361


地元紙フィラデルフィア・インクワイアラーは、ウエスト・フィラデルフィアで起きた騒乱でも何台かの警察車両に火がつけられたと伝えた。

夜間外出禁止令を出している都市もある。

ドナルド・トランプ大統領は、「フィラデルフィアに法と秩序を、今すぐに! 商店が略奪されている。我々の偉大な州兵を出動させろ」とツイートした。

抗議の動きは米国外にも広がっている。ロンドン中心部では31日、反人種差別の抗議デモ行進があり、数千人が参加した。新型コロナウイルス対策として社会的距離の確保に関する命令が出ているが、無視した。参加者らは市内中心部のトラファルガー広場に集まり、アメリカ大使館へとデモ行進した。

繰り返される黒人殺害

アメリカでは以前から、黒人に対する警察暴力、特に職務質問中の警官が黒人を殺害する事件が続いており、フロイドさんの事件を機に、米国中で怒りが再燃した。

ミズーリ州ファーガソンのマイケル・ブラウンさん、ニューヨークのエリック・ガーナーさんなど、各地で相次ぎ黒人が犠牲になる事件を機に、「黒人の命は大切」(Black Lives Matter)運動が繰り返し展開されてきた。

今回、フロイドさんが死亡したミネアポリスでは黒人住民と警察が長年の緊張関係にある。2016年7月には、自動車の後部ライトが壊れていたため警察に呼び止められた黒人男性フィランド・カスティールさん(32)が、警官に撃たれて死亡している。

また、この前日には南部ルイジアナ州で黒人男性が警察に射殺されていた。また1ヵ月後の8月半ばには、中西部ウィスコンシン州で黒人男性が警察に射殺され、続く同年9月下旬には南部ノースカロライナ州でも黒人男性が警察に射殺された、激しい抗議が市内で起きた。

今回の事件を撮影した動画では、チョーヴィン被告は8分以上にわたり、息ができないと訴えるフロイドさんの首を膝で押さえつけていた。

フロイドさんの死をめぐる大勢の怒りは、社会経済的な格差や差別に対する積年の不満を反映している。ミネアポリスではそれがとりわけ大きい。

同市や隣町セントポールでは、5夜連続で放火や略奪が続いている。ミネソタ州のティム・ウォルツ知事は30日、第2次世界大戦以降初めて、全州兵を出動させると表明した。

ウォルツ氏は、同州の人種差別がフロイドさんの死の下地をつくったと述べた。

国防総省の州兵総局は31日、15州と首都ワシントンで計5000人の州兵が動員されたと発表。「州と地元自治体の司法当局が引き続き治安維持に当たる」と付け加えた。州兵は連邦政府軍の予備役で、国内の緊急事態にも対応する。

抗議行動の状況は?

全米各地の少なくとも30都市で大規模な抗議デモが起きている。土曜日の30日の日中はおおむね穏やかだったが、夜になって暴動へと過激化した。

ミネアポリスやロサンゼルスのほか、アトランタ、シカゴ、デンヴァー、ルイヴィル、リッチモンド、サンフランシスコ、シアトルでも夜間外出禁止令が発令された。

ロサンゼルスでは暴動が拡大。メルローズやフェアファクスなど有名な通りに並ぶ商店を含め、数多くの店が略奪に遭っている。火災も発生しており、警官隊はゴム弾を発射したり、警棒で抗議者らをたたいたりした。

カリフォルニア州のギャヴィン・ニューサム知事は、同市を対象に緊急事態宣言を発令し、州兵を出動させた。

ニューヨーク市では、警察が1晩に約350人を逮捕した。数十人の警官が軽傷を負った。

ロイター通信によると、ソルトレークシティで抗議者らを弓矢で狙った男が、群衆に袋だたきにされた。

「差別主義者は少数派」

ロバート・オブライエン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)はCNNに、「(警察に)組織的な人種差別があるとは思わない」と述べた。

また、「人種差別主義の警官はいるが少数派だと思う。ろくでもない少数派であり、一掃しなくてはならない」と話した。

トランプ氏は30日夕、フロイドさんが亡くなったことについて、「多くのアメリカ人が恐れと怒りと悲しみでいっぱいになった」と述べた。

トランプ氏はまた、「略奪者と無政府主義者」の行為はフロイドさんの名誉を汚していると非難。必要なのは「憎しみではなく癒し、混乱ではなく正義だ」と述べ、「暴れる暴徒が事態を支配するなど許さない。そうはさせない」と強調した。

BBCのアンソニー・ザーカー北米担当記者は、トランプ氏が国民の連帯と癒しを呼びかけていることについて、同氏がふだんからツイッターで政敵をあざ笑うあだなをつけてののしったり、敵意をむき出しにしたりしてきただけに、今になって連帯を呼びかけても、その言葉の説得力は薄れていると指摘した。

ザーカー記者はさらに、新型コロナウイルス流行による経済的、社会的な大打撃が、フロイドさんの死をきっかけに暴動が発生した政治的な状況をつくったと説明。トランプ氏は今回の暴動をあおっていないとしても、抑え込むのは難しいかもしれないとした。

(英語記事 Floyd death was 'premeditated murder' - US lawyer