小新井涼(アニメウォッチャー)

 吾峠呼世晴(ごとうげ・こよはる)氏の人気漫画『鬼滅の刃』が、5月18日発売の『週刊少年ジャンプ』で堂々の完結を迎えました。今や社会現象ともいえる盛り上がりをみせる本作が、まだまだ人気も冷めやらぬタイミングでの最終回に、驚いた方も多いと思います。一体どのような意味があったのでしょうか。

 『鬼滅の刃』は、人を喰う「鬼」の棲む大正時代を舞台に、鬼にされた妹を人間に戻すため、鬼狩りの組織に入った主人公が、仲間と共に元凶である「最初の鬼」に立ち向かうという和風剣戟奇譚です。

 ジャンプの王道路線といえば「友情・努力・勝利」ですが、面白さはそれだけではありません。義理人情や家族愛という普遍的なテーマからバトルやコミカルなシーンといったエンタメ要素まで、さまざまな魅力を併せ持ち、現在老若男女を問わず、幅広い層に支持されています。

 昨年4月からのアニメ放送を機に原作の人気も急上昇し、放送開始直後500万部だった原作累計発行部数は、今年5月には10倍を超える6千万部を突破。その人気はアニメや漫画ファンの枠を超えて広がり、今や社会現象と呼ばれるまでになりました。

 こうしてみると、「そんなに売れているなら、なおさらもっと続ければいいのに」とこのタイミングでの完結を益々不思議に思うかもしれません。しかし、本作はむしろ「これだけ売れている中で完結した」ことにこそ、特別な意味があったと考えられるのです。

 実は、『鬼滅の刃』は、昨年アニメ放送が開始した時点で、原作では既に敵との最終決戦へと突入していました。そのためアニメの放送中も、徐々に人気が高まる一方で、「でも、そろそろ原作は完結しそうだよね」ということは、ファンの間でもずっと予想されていたのです。

「鬼滅の刃」20巻((C)吾峠呼世晴/集英社)
『鬼滅の刃』20巻((C)吾峠呼世晴/集英社)
 ところが、アニメの放送終了後も盛り上がりが拡大し続け、人気が社会現象化していくうちに、別の意見も囁かれるようになっていきました。「もしかしたらこのまま、原作が終わらなくなるのでは」という予想です。

 これには、ジャンプ作品のファンが抱える 「打ち切り」と「引き延ばし」への不安が関連していると考えられます。ジャンプでは、連載継続において読者アンケートによる作品の人気順を重要視してきた経緯があります。

 したがって、「人気が振るわない作品は打ち切られ、逆に人気が高くなると、完結を先延ばしにしてずるずる連載が引き延ばされる」という推測が、読者の間で根付いています。そのため、今回アニメ化を経て累計発行部数が急増した『鬼滅の刃』も、「ジャンプとしてはこれだけ売れている作品を終わらせたくはないだろう」と、後者の「引き延ばし」がファンの間で予想されるようになったのです。