2020年06月02日 16:10 公開

デイヴィッド・モロイ、ジョー・タイディテクノロジー担当記者

黒人男性のジョージ・フロイドさんが白人警官に押さえつけられて死亡した事件をめぐる抗議デモがアメリカ全土に拡大する中、ハッカー集団「アノニマス」が再び活動を始めている。

アノニマスはかつて、不正行為が取りざたされた人物を標的にサイバー攻撃を行い、たびたびニュースを騒がしていた。数年間は比較的静かだったが、今回の暴力的な抗議デモをきっかけに復活したようだ。アノニマスは、ミネアポリス市警の「数々の犯罪」を世間に暴露すると誓っている。

しかし、この謎の集団が実際にどう活動しているのか、特定するのは簡単ではない。

「アノニマス」とは何者なのか

アノニマスはいわゆる「ハッキヴィスト(政治目的のためにハッキングを行う人物)」の集団で、顔も指揮系統もなく、多数の個人が集ったグループとされる。「We are legion(我々は軍団だ)」という短いスローガンは、自分たちが多くの個人から成り立っていることを意味するものとされる。

中心となる指揮系統がないため、誰もがこの集団の一員だと主張できる。それだけに、何を重視するかは個々のメンバーによって大きく異なる可能性がある。決まったひとつのテーマもない。

しかしアノニマスのメンバーは通常、権力を悪用したとみなす人物に狙いを定める。

ウェブサイトを乗っ取ったり、強制的にオフラインにしたりするなど、分かりやすい公然とした形で行動をとる。

映画「Vフォー・ヴェンデッタ 」で有名になった「ガイ・フォークス・マスク」が、アノニマスのシンボルだ。

どんな攻撃を

ジョージ・フロイドさんの抗議デモに関連して、アノニマスは様々なサイバー攻撃を仕掛けたとされている。

まず、ミネアポリス市警のウェブサイトが先週末に一時的にオフライン状態になった。サーバーに意図的に過剰な負荷をかける分散型サービス妨害(DDoS)攻撃を受けたとみられる。

DDoSは、アクセス集中でショッピングサイトがつながらなくなるのと同じ仕組みで、単純だが効果的なサイバー攻撃のかたちだ。

警察署のシステムからハッキングされたとされるメールアドレスやパスワードのデーターベースが流出している。これも、アノニマスと関連している。

しかし、セキュリティー研究者のトロイ・ハント氏は、警察のサーバーがハッキングされたという証拠はなく、今回の資格情報は過去の情報漏えいから集めた可能性が高いと指摘する。

https://twitter.com/troyhunt/status/1267237890863493120

小規模な国連機関のウェブサイトのページは、フロイドさんを追悼するページと化し、「力とともに眠れ(Rest in Power, 少数派社会に変化をもたらした死者へ送る表現)、ジョージ・フロイド!」というメッセージに差し替わっている。

ツイッターでは、警察のラジオから音楽が流れ、連絡手段を妨害しているとの未確認の投稿も拡散されている。

しかし専門家たちは、こうした攻撃がシステムへのハッキングの結果だという可能性は低いとみている。そもそもこうした動画が本物だったとして、デモ現場で警察機材などが抗議者に奪われて使われているのではないかという。

アノニマスの活動家たちはまた、何年も前のドナルド・トランプ氏に対する民事訴訟資料をインターネットに掲載している。これは、原告が裁判開始前に自主的に取り下げた訴えの内容だ。

過去にも人種問題で活動?

アノニマスのメンバーには、統一された決まったアプローチは存在しない。それにも関わらず、この集団は過去に人種関の関係をめぐりターゲットを絞ったことがある。

2014年にミズーリ州ファーガソンで黒人男性マイケル・ブラウンさん(当時18歳)が警官に射殺され、抗議デモが勃発した際には、アノニマスはデモ参加者が危害をこうむるようなことがあれば同市を標的にすると脅迫した。

その後、市のウェブサイトを無効にし、市役所での通信を妨害し、市警本部長を標的にした

同年にはアメリカの白人至上主義団体「クー・クラックス・クラン」(KKK)に「宣戦布告」し、KKKのメンバーとされる約1000人の個人情報をオンラインで公表した。

「反白人人種差別」の疑惑をめぐり、「黒人の命は大切(Black Lives Matter)」運動のウェブサイトを攻撃した者もいた。

アノニマス復活は信頼できる?

BBCのニューヨーク特派員ニック・ブライアントは、ジョージ・フロイドさんの死は、1968年のマーティン・ルーサー・キング牧師の暗殺以来、最も広範な人種的動揺と社会不安をもたらしたと表現した。

こうした社会情勢を背景に、アノニマスと関連があるとされるフェイスブックページが。フロイドさんの死に関連する動画を公開し、ほかの一連の犯罪にミネアポリス市警が関与していると主張し、自分たちは実力行使に出ると宣言している。

同じフェイスブックページは直近の数週間、未確認飛行物体(UFO)や「世界制服のための中国の計画」に関する動画を複数投稿している。これらには、ジョージ・フロイドさんの動画と同様に電子音声が使われ、これまでに公開されたニュースについて議論している。

しかし、ミネアポリス市警のウェブサイトが遮断されたことで、今回一気に注目を集めた。

今回のサイバー攻撃とアノニマスの関係は

アノニマスの活動が初めてメディアで大きく報じられたのは、2008年にサイエントロジー教会のウェブサイトの一部を遮断するためにDDoS攻撃を使ったことだった。この時、通信を妨害するためにいたずら電話や空のファックスメッセージを送信していた。

それから数年間、世界的金融危機の余波の中でアノニマスは民主化運動「アラブの春」を支援し、プレイステーション3のハッキングを取り締まろうとしたソニーを標的にし、米経済界への抗議運動「ウォール街を占拠せよ」を支援した。

アノニマスはその後も同じような行動を続け、世界中で反体制集会を開いてきた。しかし近年は主要メディアでの存在感は薄れていた。

その革命的なイメージと、積極的に権力者と対決する姿勢は、現在のアメリカでの危機的状況の中で人々の共感を呼んでいるようだ。

(英語記事 The return of the Anonymous hacker collective